AI導入で生産性が上がらない「本当の理由」 高精度法人DB×AIは営業組織をいかに活性化するか
AI導入で生産性が上がらない本当の理由 高精度法人DB×AIの可能性

生成AIの導入が進む一方、多くの企業が「AIを導入したが成果が出ない」という課題に直面している。調査で明らかになった根本原因は、AIのスキル不足だけではなく、参照するデータにあった。この課題を乗り越え、AIで営業組織を強化するには、どのようなAIデータプラットフォームが必要だろうか。

AI導入の理想と現実 「不正確なデータ」が現場の生産性を低下させる

DX推進や労働力人口の減少などを背景に、限られたリソースでパフォーマンスを最大化する目的から、営業組織におけるAI活用の機運が高まっている。しかし、生成AIを導入して実際に効果を実感している企業はまだ少ないのが実情だ。

なぜ投資に見合う成果が得られないのか。営業、マーケティング支援に特化した企業データベースなどを提供するユゾナの歴舟拓也氏(取締役COO 営業本部長)は、原因はAIそのものではなく、AIを実務で機能させる「前提条件」が欠落している点にあると指摘する。

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「『どのAIツールを使うか』といった議論ばかりが先行し、『AIにどのようなデータを渡せば、現場の営業活動に役立つ情報を引き出せるか』を十分に検討、理解できていないケースが大半です。機密情報の漏えいリスクの懸念もあり、一部の社員が議事録作成やメールの要約など、売り上げに直結しない汎用的な用途で使う程度にとどまっている組織が多いようです」

ユゾナの歴舟拓也氏(取締役COO 営業本部長)

回答精度への不信感 その根本原因はデータに起因

こうした表面的なAI活用から抜け出せない背景には、現場にまん延する「AIの回答精度」に対する不信感がある。同社がAIを利用する500人のビジネスパーソンを対象に実施したアンケート調査によれば、生成AI利用者の約7割が回答の正確さや信頼性に不満を感じており、その根本原因の約6割がプロンプトのスキル不足ではなく「専門情報の不足」や「元データの誤り」などデータに起因するものだった※1。

不正確なデータから生成された情報は、現場にさらなる負担を強いる。回答者の7割以上がAIの回答の間違い探しや修正に、最短でも毎回5分以上を費やしており、生産性を高めるはずのツールがかえって効率を低下させる要因になっている※1。

一般的な生成AIサービスは、Webをクローリングして収集したデータに基づいて回答を生成する。そのため、同名の別企業に関する情報や古い情報を混同して無理に文章をつなぎ合わせ、事実と異なる情報をあたかも事実であるかのように出力するハルシネーションを引き起こしやすい。不確かなデータで使用した場合、AIは現場の混乱を増すだけだ。

※1 生成AIの業務活用、「アウトプットの正確さに不満」7割 ~ユゾナ、ビジネスパーソン500人に調査。改善のカギはデータに~ https://usonar.co.jp/news/20260617_1780.html

全国4300人が「人力」で精査した法人DBで高い回答精度を実現

こうした課題を抜本的に解決するソリューションとしてユゾナが提供を開始したのが、企業支援AI「uゾナ」(ゆゾナ)だ。

uゾナの最大の特徴は、同社が保有する法人企業データベース「LBC」を基盤にしている点にある。LBCは約1250万拠点に採番した11桁の管理コードで、企業を拠点単位で一意に特定する。事業所、本社、系列関係まで、正しく整理されたデータだけをAIに渡すことで、事実誤認を防ぎ、高精度な回答を導き出す。同名の別企業と混同することもない。

uゾナの企画、開発を統括する山本友和氏(執行役員 データコントロール本部 ソナーグループ長)は、LBCの正確な情報に基づいて営業やマーケティング活動をする強みをこう説明する。

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ユゾナの山本友和氏(執行役員 データコントロール本部 ソナーグループ長)

「LBCは、企業各社について非常に多くの情報を蓄積しています。営業担当者が同様の情報を自力で収集、分析して商談の準備をするためには、多くの時間と高いスキルが求められます。uゾナはLBCが持つ膨大かつ正確な情報を基に生成AIが分析し、『営業担当者として次にどう動くべきか』という具体的なアクションの示唆を得られます」

AIの提案を実践レベルに引き上げるのは、LBCが持つデータの精度と網羅性だ。ユゾナでは、全国約4300人※2の調査スタッフが、登記簿情報や自治体への開示請求なども含めてWeb上にはないアナログ情報を人力で収集している。同時に、営業活動に必要な取引企業に関するニュースや人事異動、中長期経営計画といったリアルタイムの情報を、企業サイトのクローリングなどによって日々キャッチしている。人力で集めた確かな情報と最新のデジタル技術で収集したデータは、常にLBCと統合し、「どの企業のニュースか」が正しく紐付けられる。こうして同名企業などのノイズを排除し、正確なデータを維持している。

※2 登録者数ベース

uゾナが生成する企業情報の例

LBCに蓄積された正確な情報を基に、ターゲット企業の最新状況を常に正確に把握できる(提供:ユゾナ)

企業独自データとの組み合わせで最適な回答を生成

uゾナは単体で提供されるAIサービスではなく、ユゾナのサービスと組み合わせて展開する。その第一弾として、法人向け企業情報+名刺管理アプリ「mゾナ」と、そのWebブラウザ版「ガイドゾナ」に実装した。

この機能が真価を発揮するのは、LBCの正確かつ膨大な企業データに、ユーザー企業自身が蓄積した名刺情報や過去の接点履歴などを組み合わせているためだ。さらに、管理画面で自社商材の強みやメインターゲットを事前に登録しておくことで、AIが商材の特性をより正しく理解し、一般的な回答ではなく「自社の商材と強みに沿った適切なアプローチ」を導き出せるようにしている。

誰でも簡単に使いこなせる直感的な操作性

uゾナの使い方は直感的だ。mゾナの画面では「uゾナ」ボタンを押すだけで、商談前の事前調査がわずか数秒で完了する。

uゾナが生成する情報は3つに分類できる。1つ目は、企業の最新動向や業績動向などを簡潔にまとめた「企業要約」。2つ目は、自社社員との名刺交換の有無や最終接触からの経過日数などの「接点情報」。3つ目が、これらを総合的に分析して「どの部署に接触すべきか」といった具体的な営業の施策を提示する「提案アクション」だ。

提示された提案アクションについて、AIとチャットで対話しながら深掘りする機能もある。AIを相手に壁打ちすることで、「自社の商材を取引の業態や課題に対してどう提案するのが効果的か」を議論し、実際の商談で使える具体的な提案ストーリーを練り上げられる。

mゾナの「企業」タブや「担当者」タブに表示されている情報について質問や相談事があれば、画面左上の「uゾナ」ボタンを押すことで、いつでも使える(提供:ユゾナ)

営業力の底上げ効果を自ら実証 受注分析や興味シグナルに基づく分析も可能

ユゾナは、自社の営業部門を最初のユーザーに据えて、正式リリース前にuゾナをテストした。実践に利用したところ、現場からは「営業が求めている情報をわずか数秒でまとめられる」と高い評価を得た。商談前の準備時間が大幅に短縮されたことで、取引と向き合う本来の営業活動に充てる時間が増えた。

ユゾナの社員が日々の営業活動で効果を実感している、mゾナ×uゾナの活用シーン(提供:ユゾナ)

社内での活用が進む中、開発側が想定していなかった高度な活用法も共有されるようになった。

「『この会社から受注できた要因を分析してほしい』とuゾナに聞いている若手社員がいました。受注できた理由を明らかにし、他社のお客様まで展開するための振り返りに活用していたのです」(山本氏)

若手の活用法に触発され、ベテラン層のマネジメント手法にも変化が起きている。AIで言語化した「受注要因」をヒントに、同じ業界、規模でまだアプローチできていない企業を可視化。チームメンバーに対してそれらの企業へのアプローチを指示するなど、活用ノウハウの組織的な横展開が進んでいるという。

マーケティング領域にも展開 将来はAIが自律的に支援する仕組みも

ユゾナは今後、注力すべき市場の分析やターゲット企業の選定を支援する経営戦略プラットフォーム「プランゾナ」にもuゾナを展開する計画だ。

「『こういう企業にアプローチしたい』と自然言語で話しかけると、それに合った条件やターゲット像(セグメント)をAIが提案します」

膨大な企業データベースから自社の商材に適したセグメントを抽出するには、豊富なマーケティング経験やデータベースの知識が必要だ。uゾナの搭載によってユーザーはチャットで大まかな要望を指示するだけで、AIが適切な絞り込み条件の作成をアシスト。精度の高い企業リストを作成できるようになる。

AI活用の本質は「人を育て、組織を強くする」こと

AI技術が進化する中、営業組織の強化においてuゾナは今後どのような役割を担うのか。山本氏は、AIが単なる代替手段ではなく、営業担当者のスキルを高める「壁打ち相手」として定着する未来を示唆する。エンジニアがAIを使うのが日常的になったように、営業も取引先訪問前にAIと議論することが当たり前になるという。

「AIに任せられることは任せ、人は『人にしかできない高度な提案』に集中する。それを通じて人を育て、組織を強くする装置としてuゾナが役立てばと考えています」

歴舟氏は、データの品質が成否を分けるAI時代に同社のデータ基盤を組み合わせたuゾナの提供が単なる業務効率化にとどまらず、人材の定着にも貢献すると話す。

「uゾナの提案があれば、経験の浅い方の心理的なハードルを下げ、成果を上げられます。『AIを使えばお客様が喜んでくれる』という体験は営業の仕事に楽しさを生み、人材の定着や育成に結び付くでしょう」

ユゾナの歴舟取締役(左)と山本執行役員(新宿・初台のユゾナ本社にて)