楽天市場に「AI店長」導入へ 三木谷氏が「スーパーエージェント」構想とモバイルの重要性を説明
楽天市場に「AI店長」導入へ 三木谷氏が構想を説明

楽天グループは8月5日、AIをテーマにしたビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」をパシフィコ横浜で開幕した。初日に登壇した代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、楽天市場のAI店長と、生活全般を任せるスーパーエージェントの2つを初公開した。共通するのは、質問に答えるだけでなく、予約や購入、決済までを実行することだ。同社はこの方向性を「エージェントからスーパーエージェントへ」と表現する。

会話だけで購入まで完結するAI店長

AI店長は、楽天市場の出店店舗ごとにAIの店長を置く構想だ。各店舗の店長をアバター化し、24時間365日の問い合わせ対応や購入支援を担う。デモ画面には店舗ごとに名前と姿の異なるAI店長がカテゴリー別に並ぶ一覧も映し出された。

デモでは、肌の悩みを伝えた客に化粧水を2点提案し、注文の依頼から注文の最終確認まで会話だけで完結する流れを見せた。回答の質は商品ページの充実度に左右されるとし、各店舗がページに書く「うんちく」や思いの記載がAI店長の個性になると説明した。提供時期は未定だが、楽天によると年内に一部の店舗でテスト運用を始める予定だ。

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三木谷氏は、人間には人間味のあるAIが必要だとの考えを示した。AI店長も単に取引を執行するのではなく、客の意図をくみ取って店舗ごとの特徴を生かした提案を行う存在にしたいという。

スーパー秘書は決済や外部サービスまで踏み込む

三木谷氏がスーパー秘書とも呼ぶスーパーエージェントは、ショッピングから旅行、金融まで70以上のサービスを持つ楽天グループのデータを理解した上で、秘書業務をこなす構想だ。

デモでは沖縄への家族旅行を題材に、家族構成や旅行歴を踏まえたプラン生成、宿の予約、家族へのメール共有、過去の購入履歴に基づく持ち物リストの作成までを一続きで見せた。ポイント還元の相談では、楽天会員の+1倍に楽天モバイル契約(エントリー時)の+4倍を重ねたSPU5倍の内容を提示してみせた。

今後の拡張として、「AIエージェント同士が連携するサービス横断」「予約から決済までをシームレスに実行する決済完結」「カレンダー登録やメール作成を代行する外部サービス連携」の3点を挙げ、順次アップデートする計画も示した。

Rakuten Linkでは「AI通話要約機能」の提供開始

Rakuten Linkでは、通話内容をAIが文字起こしして要約する「AI通話要約機能」の提供を同日に始めた。要約からそのままRakuten AIに質問を引き継げる。今後はリアルタイムで通訳を行うエージェントの構想にも触れた。スマートフォン標準の通話アプリでの利用を想定しているが、提供可否や時期は未定という。

動くAIを支えるのはモデルよりデータ

実行を担うAIエージェントの性能は7カ月ごとに倍増しているといい、半導体性能が1年半で2倍になるムーアの法則を上回る。三木谷氏は「さすがにAIには無理だろうと思っていたことができるようになる」と語り、自動運転やコンテンツ生成を例に挙げた。

モデルは楽天自身も手掛け、スマートフォンなど端末上で動かすエッジ用の15億から、最高性能とする7000億まで、パラメータ規模(モデルの大きさを示す指標)の異なる4つのLLMを開発している。外部AIに全面依存するとデータセキュリティや利用コストのリスクがあるというのが理由だ。

ただ、DeepSeekやアリババのQwenのように学習済みモデルを公開する中国の「オープンウェイト」勢が台頭しており、楽天のLLM自体も公開されたオープンモデルを基に日本語データで追加学習する手法で開発されてきた。

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オープン化でモデルの性能差が縮むなら、AIの力を左右するのはデータだというのが三木谷氏の持論だ。楽天グループでは毎月4600万人が取引などの活動を行い、3兆を超えるデータが1つのID、1つのポイント基盤の上に蓄積されている。汎用(はんよう)AIがWeb上のデータで一般的な質問に答えられても、取引のような特定領域はデータがなければ活用できないと説いた。

2025年度にはAIの活用で約255億円の利益を創出したといい、決算説明会ではUX向上による売り上げ増加と業務効率化によるコスト削減の両面が寄与したと説明していた。

エコシステムに人を送り込む楽天モバイル

そのデータと接客接点を広げる入り口が楽天モバイルだ。三木谷氏は、日本の物価は6年間で13.6%上昇し、AIによるメモリ不足やエネルギー需要の増大、国際紛争を踏まえると物価高は今後も加速していくとの見方を示した。

その上で楽天モバイルを、「通信費を下げて物価を押し下げる存在」と位置付けた。データ使い放題で月額2980円という料金設定は、信号処理を専用ハードウェアではなく、汎用的な半導体上のソフトウェアで行う仮想化ネットワークのコスト優位性が支えていると説明した。契約回線数は1075万に達し、間もなく1100万に達する見通しだ。

楽天モバイルを契約すると、楽天市場での買い物が51.3%増、楽天トラベルの利用が21.6%増、楽天カードの利用が33.3%増になるという。楽天市場の流通総額に占める契約者の割合は23%まで高まった。モバイル負けに楽天のエコシステムは語れないというのが同氏の認識で、スーパーエージェントのデモでSPUの倍率を押し上げていたのも楽天モバイルの契約だった。

講演の最後に三木谷氏は「好きか好きじゃないかにかかわらず、AIは激震だ」と述べた。その上で、マーケティング効率、グループのオペレーション効率、店舗やホテルなど取引先の業務効率をそれぞれ20%高める「トリプル20」の目標を掲げて示し、出店者らにAI活用を呼びかけた。