大学入試の風景が変わりつつある。これまで長らく「紙と鉛筆」によるペーパー試験が主流だったが、2025年度入試前後からパソコンを使って解答するCBT(Computer Based Testing)形式の試験が導入され、徐々に広がり始めた。CBTは単に紙をデジタルに置き換えるだけでなく、試験会場の拡大や常時受験の可能性など、入試の在り方そのものを変えるポテンシャルを秘めている。
導入広がるCBT入試、国立・私立で先行事例
すでに国立大学の電気通信大学(東京都)、私立大学の創価大学(東京都)などがCBT入試を実施している。さらに、2027年度入試からは城西大学(埼玉県・東京都)が導入を発表している。城西大学入試部の桂澤朗氏は「一般選抜のメイン『A日程』でCBT入試を導入する。これにより、全47都道府県、最大200カ所の試験会場を用意できる。これはCBT入試でなければ不可能だ」と語る。従来のペーパー試験では、会場確保や監督者の手配など物理的制約が大きく、全国展開は容易ではなかった。
CBTシステム提供事業者の取り組み
CBT化を実現するシステムを提供する事業者は、ベンチャー企業を含め複数存在する。その中で最も老舗なのがプロメトリック社だ。1991年設立で、業界で長い歴史を持つ。同社経営戦略室の佐藤大輔氏はCBT入試のメリットを強調する。「問題冊子や解答用紙が不要になり、紛失などのリスクもない。また、動画で出題するなど、CBTならではの試験が可能となる」。動画を用いた出題は、従来の紙では表現が難しかった実験映像やシミュレーションなどを試験に取り入れることを可能にし、受験生の理解度をより多面的に評価できると期待されている。
常時・随時受験の可能性と今後の展望
CBTのもう一つの大きな利点は、常時・随時受験が可能になる点だ。従来の一斉試験では、特定の日時に会場に集まる必要があったが、CBTでは試験期間を複数設けたり、受験生が自分の都合に合わせて受験日時を選択できるようになる。これにより、受験生の負担軽減や、他の試験との併願が容易になるなどのメリットが生まれる。また、試験結果の即時フィードバックや、問題の難易度に応じた適応型テストの導入も可能となり、より公平で効率的な入試システムの構築が期待されている。
一方で、CBT導入には課題も残る。パソコンの操作に不慣れな受験生への配慮や、システム障害時の対応、セキュリティ対策などが挙げられる。しかし、これらの課題を克服しつつ、CBT入試は今後さらに拡大すると見られる。城西大学の桂澤氏は「CBT入試により、地方の受験生にも都心の大学と同じ条件で受験する機会を提供できる」と述べ、地域格差の是正にも貢献すると期待を示す。プロメトリック社の佐藤氏も「技術の進化により、CBTはさらに多様な試験形態を可能にするだろう」と展望を語る。
大学入試のデジタル化は、単なる手段の変更にとどまらず、教育の質や機会均等にも影響を与える可能性がある。今後の動向が注目される。



