日本政府は、人工知能(AI)の開発・利用に関する包括的な規制法案を、今通常国会に提出する方針を固めた。複数の政府関係者への取材で明らかになった。法案はAIのリスクレベルに応じて規制の強度を変える「リスクベース・アプローチ」を採用。EUのAI規則(AI Act)を参考にした世界でも先進的な枠組みとなる見通しだ。
リスクに応じた3段階の規制
法案では、AIをリスクの高さに応じて「高リスク」「中リスク」「低リスク」の3段階に分類。高リスクAIには事前の許可制を導入し、開発・提供に際して当局の認可を義務付ける。対象として想定されるのは、クレジットスコアリングや採用選考、犯罪予測など個人の権利や安全に重大な影響を与える用途だ。
中リスクAIには届出制を課し、開発者や提供者に対し、利用目的やアルゴリズムの概要、学習データの出所などを当局に報告することを求める。一方、チャットボットや画像生成AIなど低リスクと判断されるAIは、自主規制に委ねるが、違反行為があった場合には事後的に規制を強化できる仕組みを盛り込む。
EU規制を参考にした世界標準狙う
政府は、EUが2024年3月に可決したAI規則を参考に、日本独自の規制体系を構築。EU規則はリスクベースの枠組みで、高リスクAIには厳格な要件を課し、違反には巨額の制裁金を科す。日本もこれに倣い、違反した事業者には罰則を科す方針。罰則の詳細は今後詰めるが、EUのように売上高の一定割合を課す案も検討されている。
岸田文雄首相は、AI戦略会議で「AIの利活用を促進しつつ、リスクに対応する規律を早期に整備する」と述べており、法案は政府のAI政策の柱となる。政府は、2025年の通常国会での成立を目指す。
懸念される規制の実効性とイノベーションへの影響
一方で、規制の実効性やイノベーションへの影響を懸念する声も上がっている。AI技術の進展は速く、規制が技術の進歩に追い付かない可能性がある。また、過度な規制はスタートアップなどの新規参入を阻害し、日本のAI競争力を弱めるとの指摘もある。政府は、規制の柔軟性を確保するため、政省令で詳細を定める委任立法の形式を採用する見通し。
専門家からは「EU規制をそのまま導入するのではなく、日本の産業構造や社会状況に合わせた調整が必要」との声が上がっている。法案の内容次第では、AI開発企業や利用企業の間で賛否が分かれる可能性がある。



