野村総合研究所は2024年3月、生成AI(人工知能)の普及が日本の雇用に与える影響についての試算を発表した。それによると、日本の労働人口のうち、最大で約240万人が雇用影響を受ける可能性があるという。これは、全労働者の約3.6%に相当する。
生成AIによる業務代替の可能性
同研究所は、生成AIが特に影響を与える職種として、事務職や販売職を挙げている。これらの職種では、データ入力や書類作成、顧客対応などの業務が生成AIによって代替される可能性が高いと分析。一方で、専門職や管理職など、高度な判断や創造性が求められる職種では、AIによる代替リスクは低いとしている。
試算では、生成AIの導入が進むシナリオで、2024年から2030年までの間に、約240万人の雇用が影響を受けると予測。このうち、約160万人は現在の業務が大幅に変化し、残りの約80万人は職種転換が必要になる可能性があるという。
新たな雇用創出の可能性も
一方で、生成AIの普及は新たな雇用を生み出す可能性も指摘されている。AIシステムの開発や運用、データ分析、AIを活用した新規事業の創出など、新たな職種が登場すると見込まれる。野村総合研究所の主任コンサルタントは「生成AIは単なる業務代替ではなく、人間の能力を拡張するツールとして捉えるべきだ。AIを活用できる人材への需要は高まる」と述べている。
また、政府も生成AIの普及に伴う雇用対策を検討し始めている。経済産業省は2024年度中に、AI時代に対応したリスキリング(学び直し)プログラムの拡充や、職業訓練の見直しなどを盛り込んだ政策パッケージを策定する方針だ。
業種別・職種別の影響分析
業種別では、情報通信業や金融業、卸売業などで影響が大きいと予測される。これらの業種では、データ処理や分析業務が多く、生成AIによる効率化が進みやすいためだ。一方、医療や教育、建設業など、対人サービスや物理的な作業が多い業種では、影響は限定的とみられる。
職種別では、一般事務職が最も影響を受けやすく、次いで販売職、サービス職の順となっている。特に、ルーティンワークが多い職種では、生成AIによる代替リスクが高い。しかし、野村総合研究所は「AIに代替されやすい業務でも、人間の判断や創造性が必要な部分は残る」と指摘している。
企業の対応と個人のキャリア戦略
企業側も、生成AIの活用と従業員のキャリア形成の両立が求められている。大手企業では、AI導入に伴う社内教育や、AIを使いこなせる人材の育成に着手し始めている。また、中小企業でも、業務効率化のために生成AIを導入する動きが広がっている。
個人レベルでは、生成AIの基本的な使い方や、データリテラシーの習得が重要になると専門家は指摘する。特に、AIと協働するスキルや、AIでは代替できない創造性や問題解決能力の向上が求められる。
野村総合研究所の試算は、生成AIが雇用に与える影響の全体像を示すものとして注目を集めている。同研究所は今後も定期的に試算を更新し、政策立案や企業戦略の参考データとして提供する予定だ。



