全国初の公立人形劇場として開館した「札幌市こども人形劇場こぐま座」(札幌市中央区)が、24日に開館50年を迎える。今も年間200公演が行われ、市内で60団体を超える人形劇団の受け皿となっている。姉妹館の「札幌市こどもの劇場やまびこ座」とともに人形劇の講座を開くなど、後進を育てる役割も果たしてきた。
こども人形劇団の練習
人形を操りながら、セリフを読み上げる子どもたちの声が劇場に響く。こぐま座で毎週行われている「こぐま座こども人形劇団」の練習だ。指導するのは、自身もこぐま座で人形劇に触れてきた中島児童館の鈴木朋花さん(24)。「ここは普段遊んでいるときみたいに楽しく」「セリフはもっと大きい声でね」と助言すると、参加する6人の子どもたちは元気よく返事をした。
小学5年の男児(10)は「仲間と一つの作品を作り上げるのが楽しい。拍手をもらえると達成感がある」と魅力を語る。鈴木さんは「自分がそう教わってきたように、できるだけその子の長所を伸ばしてあげたい」と話した。
開館の経緯と特徴
1976年に開館したこぐま座は、当時の市長が視察でドイツを訪れた際、夢中で人形劇を見る子どもたちの姿に感銘を受けて建てられたという。客席90席の小さな劇場だが、柴田由香館長は「小さいからこそ、人形の細かな動きまではっきり見え、臨場感のある人形劇を楽しむことができるんです」と語る。
当時は「ひょっこりひょうたん島」(64~68年度)や「新八犬伝」(73~74年度)がテレビで人気を集めるなど、人形劇が広く親しまれていた。札幌市内にも多くの劇団があり、開館以降は代わる代わるこぐま座で公演してきた。
後進育成の取り組み
しかし、時代とともに劇団や団員の数は減少。将来の担い手を育てようと99年に始まったのが、小学3~6年生を対象にしたこども人形劇団だった。人形劇に興味がある子どもたちに、人形の操り方やセリフの読み方、舞台セットや小道具の作り方などを経験者らが丁寧に手ほどきしてきた。
その後も、中高生が対象の「パペットユーススクール」や若者向けの「パペットカレッジ」、大人の初心者らを対象にした「こぐま座人形劇講座」などを次々と開講。子どもから大人まで、切れ目なく人形劇を学べる環境が整った。
劇団「ボンド」の活動
「こぐま座がなかったら人形劇に出会えなかったし、ここまで続けられなかった」。人形劇団「ボンド」の永沢さおりさん(28)はそう振り返る。ボンドは、こども人形劇団を卒業した中学生らが2010年に札幌で結成した。団員はパペットユーススクールなどの講座を通して技術を磨き、全員が社会人になった今も、同じメンバーで活動を続けている。
現在は作品選びから脚本執筆、人形や道具作りに演出まで、全て自分たちで手がける。子ども向けの講座で団員が講師やサポート役も務めている。「好きな気持ちがあれば、大人になっても続けられると後輩たちに伝えたい」と永沢さん。今後は幼稚園など劇場外での公演にも挑戦したいといい、「人形劇の裾野をもっと広げたい」と夢見る。
館長の誇り
「気軽に人形劇に触れることができ、元受講生が後進の育成に関わる。こぐま座を中心にそんな好循環が生まれたからこそ、人形劇の文化が札幌に根付いたんだと思います」。そう話す柴田館長の笑顔は、どこか誇らしげだった。



