サッカー観戦を楽しむには、何を意識するといいか。サッカーデータアナリストのノーミルク佐藤さんは「プロのスカウトや監督はピッチ上の11人の選手を『ポジション』で観ていない。選手がどのようにゲームのパズルのピースを埋めているのかというところに現代サッカーを読み解く最大の醍醐味がある」という。本稿は、ノーミルク佐藤『サッカーIQを高める サッカーシステム完全講座』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
サッカーは“3つの優位性”をつくるゲーム
サッカーを観ていると、鮮やかに相手を抜き去るシーンや、魔法のようにパスが通る瞬間に目を奪われます。私たちはそれを「センス」や「ひらめき」という言葉で片付けがちですが、実はそのすべての成功の裏には、目に見えない「優位性(アドバンテージ)」が隠されています。
では、そもそもサッカーにおける「優位性」とは何でしょうか。それは、「相手よりも有利な条件で、次のプレーを選択できる権利」のことです。ピッチ上で起きているすべての戦術的・選択的な動きは、究極的に言えば「いかにして、相手よりも有利な状況を、特定のエリアに作り出すか」という一点に集約されます。そのアプローチには、大きく分けて3つの優位性が存在します。
「数こそが正義」を知略によって生み出す
第一の優位性は「数的優位」です。攻撃時に選手が密集して数的優位を作り出すことで、相手の守備を崩しやすくなります。例えば、サイド攻撃でオーバーラップする選手が加わることで、2対1の状況を作り出し、クロスや突破のチャンスを得られます。このような状況は、単に選手を多く配置するだけでなく、ポジショニングやタイミングの工夫によって生まれます。
「最も得意なシチュエーション」へ導く
第二の優位性は「位置的優位」です。特定の選手が最も力を発揮できるエリアでボールを受けられるようにすることで、相手にとって脅威となります。たとえば、ストライカーがペナルティエリア内でボールを受ければ得点確率が上がりますが、そのためには味方のパスや動き出しが重要です。また、相手の守備ラインの裏を狙う動きも、位置的優位を獲得する典型的な例です。
90分プレー以外の要素が重要になるケースも
第三の優位性は「質的優位」です。これは個人の技術や能力の差を利用したものです。ドリブルで相手を抜き去る、正確なロングパスでチャンスを作る、強烈なシュートを放つなど、選手個人のスキルが優位性を生みます。しかし、質的優位だけに頼ると、相手に対策されやすいという弱点もあります。現代サッカーでは、これらの優位性を組み合わせて、試合をコントロールすることが求められます。
ポジション名の呪縛から逃れる
多くのファンは「フォワード」「ミッドフィールダー」「ディフェンダー」といったポジション名で選手を捉えがちです。しかし、現代サッカーでは選手が流動的に動き、役割が変化します。例えば、サイドバックが攻撃時にウイングのように振る舞い、センターフォワードが中盤に下りて組み立てに参加することも珍しくありません。
選手が果たす「機能」に注目する
重要なのは、選手がその瞬間にどのような「機能」を果たしているかを見極めることです。攻撃時には「幅を取る」「深さを取る」「サポートする」「バランスを取る」といった機能があり、守備時には「プレッシャーをかける」「カバーする」「スペースを消す」などの機能があります。これらの機能を理解することで、一見ランダムに見える選手の動きに意味が見えてきます。
現代サッカーを読み解く最大の醍醐味
ポジション名ではなく、選手の機能と3つの優位性に注目することで、サッカー観戦の深みが増します。試合中に「今、なぜあの選手はそこにいるのか」「どの優位性を狙っているのか」を考えることで、戦術的な駆け引きを楽しめるようになるでしょう。これこそが、現代サッカーを読み解く最大の醍醐味です。



