羽島市出身で、中国・北京体育大2年の東孝大朗選手(20)が、今秋に愛知県内を中心に開かれるアジア競技大会(読売新聞社協賛)の武術太極拳の男子長拳に出場する。太極拳の本場・中国に渡り、厳しい指導にもめげずに磨いてきた技術を地元開催の大会で披露し、頂点を目指す。
「お前みたいな低レベルの選手にあげるジャージーはない」
大学1年の冬、大学の中国人コーチから厳しい言葉で突き放された。同大で練習をする仲間たちは金と黒を基調としたジャージーを持っていたが、自分の分は用意されていなかった。
中国の名門体育大学で、仲間はトップクラスの太極拳の選手たち。中国内の激烈な競争を勝ち抜いた仲間との実力差は大きく、疎外感を感じていた。コーチから練習中に指導を受ける機会もほとんどなかった。
それでも「『世界一になりたい』という思いを後押ししてくれる両親に結果を出して恩返ししたい」と練習を続けた。
5歳で競技に触れ、中国留学へ
母親がエクササイズ目的で太極拳をやり始めたことをきっかけに5歳で競技に触れた。学校が終わると、世界選手権銀メダリストの下起悦郎さん(38)の道場で指導を受けた。思い通りに体を動かせるのが気持ちよく、練習にのめり込んだ。実力を伸ばし、小学6年生でJOCジュニアオリンピックカップを優勝するまで成長した。
練習を続けていくうち、「高校から太極拳の本場の中国で学びたい」と考えるようになり、中学の時から中国語の勉強を開始。一人暮らしを想定し、料理教室にも通ったが、コロナ禍で計画は白紙になった。
留学への気持ちはあきらめきれず、中国語の勉強を続けた。高校卒業までに中国語検定4級を取得。同大を受験し、見事に合格した。
本場の技を武器に、アジア大会へ
希望を抱いて入学した同大では、実力差のある仲間たちとの練習に食らいつき、攻める時の視線の動かし方など本場の技を貪欲に習得。太極拳が根付いている中国の文化を学ぼうと、孔子をはじめとする中国思想についても自主的に学んだ。
長拳は約90秒間に決められた技を披露する形演武で、正確性や技の美しさなどが採点される。けり技や回転、足運びなどのスピード感や躍動感、ダイナミックな動作が求められる。
アジア大会の日本男子長拳の出場枠はわずか一つで、5月の選考会を経て、出場権を獲得した。「仲間や、中国での愚痴を電話で聞いてくれた先生(下起さん)のためにも頑張って、1位を取りたい」。素早さと力強さに加え、本場で学んだ技を武器に大会に挑む。



