各地で陸上競技の大会が開催され、携帯電話を通じて様々な結果や記事が目に入る中、この夏特に「良いな」と感じたのが京都・洛南高の柴田博之監督と後藤大樹選手の関係だ。
名伯楽・柴田監督の指導
柴田監督は男子100メートルの桐生祥秀選手(日本生命)をはじめ、世界で戦える選手を数多く育ててきた名伯楽として知られる。後藤選手は6月の日本選手権男子400メートル障害で18歳未満の世界記録48秒09を出し、優勝した高校2年生だ。
8月のU20(20歳未満)世界選手権で銀メダルに輝いた後藤選手に対し、柴田監督は「高校生としての本分」を意識して指導されているように映る。この時期に経験しておかなければいけない試合の質と量、そして、そこで感じるべき心の動きといったことまで考えているのではないか。
専門外の200m出走も眼力のなせる業
例えば、後藤選手がU20世界選手権前の7月に、あえて専門外の200メートルに出場したのも、その一つだ。末續氏はもともと彼は200メートルに向いているとみていたが、直感通り、向かい風1.0メートルの条件下で高校歴代3位の20秒43で走っていた。
これほどの規格の選手になると、指導する側も試合の選択などに勇気が必要だろうが、そこは柴田監督の眼力のなせる業だ。後藤選手は、このまま師弟の時間を大切にして進んでいってほしい。
高校時代の経験が将来を左右する
末續氏は自身の熊本・九州学院高時代の恩師である禿雄進先生も、高校生として必要なステップをしっかり踏ませてくれたと振り返る。ある時、「ウエートトレーニングをやりたいです」と言ったら、「石でも投げてろ」と一蹴されたことがあった。今、振り返ると、「まだ体は成長期なのだからやらない方がいい」という判断だったのだと分かる。
10代の繊細な時期をどう過ごすかは、将来的な選手の人間性や強さにつながってくる。トップ高校生の場合、自尊心が変な方に向かないよう周囲が導いてあげることも大切だ。
個人競技である陸上は精神的に1人で戦わなければならない。心地良いことや納得できること、やりたいことばかりでなく、一見、「意味がないかもしれない」と思うことでも選手自身で意味をつくっていったり、気合で乗り越えたりできるくらいにならなければ勝負には勝てない。「不快」の中にこそ、まだ見ぬ自分の可能性はある。



