広島県福山市赤坂町の市立福山高が、甲子園球場で開催中の第108回全国高校野球選手権大会に初出場し、10日に天理高(奈良)と対戦した。試合は2-7で敗れたが、福山のアルプススタンドは関係者らで埋まり、大きな声援が送られた。
2500人の大応援団が甲子園へ
10日朝、福山のグラウンドには「必勝」の幕で飾ったバスが並び、スクールカラーの緑色のシャツを着た生徒や保護者らが次々と乗り込んだ。福山駅や東京からの便も含め、バスは計43台。総勢2500人が甲子園に向かった。
車内では、チアリーダーの指導で応援練習も行われた。脇谷靖伸校長は「甲子園出場経験のある他校に準備のノウハウを尋ねた。手探りだったが、できることは全てした」と話した。
試合開始、強豪相手にスタンドの熱量高まる
試合は、日没とほぼ同じ頃に始まった。1980~90年代にかけ、約10年にわたって監督を務めた伊原秀夫さん(66)(福山市)は「夢にも見たことがない奇跡が現実になった。涙が出そう」と語った。
天理は春夏計3度の全国優勝を誇る強豪校だ。試合中、相手のチャンステーマ「ワッショイ」が響くと、福山の応援席がざわついた。
それでも、相手に負けまいと福山のスタンドの熱量は高まっていった。吹奏楽団は卒業生らを加えた約90人で編成し、足りない楽器は近隣の中学校から借りた。曲目も広島大会より約10曲増やした。チアリーダーは市花であるバラのコサージュを胸に付け、よりダイナミックな振り付けに変更した。試合が進むにつれ、応援の息が合っていった。
8回の反撃で最高潮、歴史に刻まれた一戦
試合は天理が先行する展開となったが、福山が八回に岩本大輝選手(2年)の適時打で2点を返すと、盛り上がりは最高潮に。岩本選手の祖父・沖幹夫さん(76)(三原市)は、6月に亡くなった妻の由美子さんの遺影を持って観戦した。生前は夫婦で頻繁に練習試合を見に行ったといい、「大輝が輝いて見えた。妻も喜んでいると思う」と話した。
残念ながら、福山は甲子園での初勝利とはならなかった。だが、チアリーダーで2年の女子生徒(16)は「ここまで連れてきてくれた選手に感謝したい」と目を潤ませた。
大応援団からのエールは、選手たちにも届いていた。渡辺雄介主将(3年)は試合後、「グラウンドに立つと多くの市民に見守られているのがわかり、勇気づけられた」と話した。
小田浩監督(62)も「劣勢の中でも1球1球に声援をもらい、感謝の気持ちでいっぱい」と述べた。選手たちの活躍とともに、学校や市民らが一丸となって応援したことは、歴史にしっかりと刻まれた。



