5月に始まった防災気象情報のように、災害時の迅速な避難の重要性は浸透しつつある。しかし、7月28日に起きた熊本地震では、大規模集客施設の可燃性ガスが要因とみられる爆発による死亡事故が注目された。安全な避難には何が必要か。全国で避難対策を支援している片田敏孝・東京大大学院特任教授に聞いた。
「想定しきれなかった」事故と自然災害の本質
ショッピングモールの爆発による死亡事故について、モールの運営会社は会見で、建物は耐震基準を満たしており、2度の震度7を記録した平成28年熊本地震や23年東日本大震災などの大災害でも前例がなく、「想定しきれなかった」と述べた。あらためて自然災害は容易に人智を超えることが示された。
釜石市の防災教育が示す「想定を信じるな」
片田氏は、東日本大震災で、8年にわたり防災教育を支援した岩手県釜石市の約3000人の小中学生のほぼ全員が避難し津波から逃れたと説明。彼らに繰り返し主張したのは「想定を信じるな」だった。この場合の「想定」とは、防災教育のベースとなった津波のハザードマップ(想定浸水域)を指すが、実際の津波は想定をはるかに超えた。それでも、自然の不確実性を理解していた子供たちはひたすら安全な場所を目指し逃げ切った。もし想定の範囲内で訓練を繰り返していたら、数百人の子供たちが犠牲になっただろう。



