関西電力が計画する使用済み核燃料の「乾式貯蔵施設」の設置について、福井県の石田嵩人知事は28日、了承を表明した。曲折を経ての決着となり、背景には前知事の答弁に縛られた経緯があった。
前知事の答弁が判断を縛る
石田知事は了承に先立ち、県議会全員協議会に出席した。各会派からは了承を求める声が出た一方、「どのような新しい判断材料がそろったのか」と県の対応を疑問視する意見もあった。石田知事から明確な答弁はなく、苦しい釈明が目立った。
約1年前の2025年9月の県議会で、当時知事だった杉本達治氏は「事前了解(了承)については、『設工認の説明が終了した段階』で、事業者から審査対応の状況を確認して判断したい」と答弁していた。乾式貯蔵施設の設置には、関電と結ぶ安全協定に基づき、県と立地町の事前了解が必要だ。
「設工認」とは、原子力規制委員会による「設計及び工事の計画の認可」の略だ。日本原燃は当時、青森県六ヶ所村で建設を進める使用済み核燃料の再処理工場について、規制委の審査会合で設工認のための説明を続けていた。杉本氏の答弁を意訳すれば、「再処理工場の完成にめどが付けば、事前了解について判断する」となる。
再処理工場の完成が鍵
関電が県に示す使用済み核燃料の県外搬出ロードマップ(工程表)では、26年度中に再処理工場が完成することを前提に、28年度から搬出するとしている。再処理工場が完成するかどうかは、県外搬出に大きな影響を及ぼす。
県外搬出を巡り、関電はこれまで中間貯蔵施設の県外候補地を示すとしてきたが、いまだ具体化していない。こうした経緯を踏まえ、関電が25年2月に提示したのが現在の工程表だ。県幹部は「今度こそは関電に約束を守らせる必要があった」と強調する。
その後、杉本氏はセクハラ問題で辞任したが、方針は石田知事も踏襲した。しかし、杉本氏の答弁は後々まで県の判断を縛ることになった。
了承機運がしぼむ
日本原燃は今年6月、会合で主要な説明を終えた。県庁内では6月県議会での了承に向け、検討が進んだ。ただ、青森県知事の宮下宗一郎氏は「26年度中の完成」に懐疑的だった。7月3日、宮下氏と会談した経済産業省幹部は、工場で保管する廃液の処理方針が変わることで、完成が遅れる可能性があると明らかにした。
青森が慎重な状況で乾式貯蔵を了承すれば、福井が前のめりに映る――。福井県庁内で、了承の機運は急速にしぼんでいった。
一方、県議会の一部は県の優柔不断な姿勢にいらだっていた。7月13日夕、県議会議事堂の一室で県防災安全部長の坂本裕一郎氏は自民党県議たちと向かい合った。県議たちは、再処理工場の動向を過度に考慮すると、了承のめどが立たなくなると危惧していた。
「これでは(議論が)一から仕切り直しになる」。県議たちは6月県議会中に了承の判断をするよう迫ったが、坂本氏は「国や青森が工場の完成遅れを考えているのに、福井だけ了解はできない」と、最後まで首を縦に振らなかった。石田知事は翌14日の県議会で、判断の先送りを表明した。
残る課題
その後、県は7~8月に国や関電と2度会談し、工程表に大きな影響はないとの説明を受けた。ただ、日本原燃は工場完成までの新たなスケジュールを今後示すとされ、関電の工程表の信頼性が揺らぐリスクは残る。
県幹部は「何も状況が変わっていないのになぜ了承できるのか。結局は振り回されているだけだ」と冷ややかに見る。
長崎大客員教授で原子力政策が専門の鈴木達治郎氏は、乾式貯蔵の導入を評価しつつ、くぎを刺す。「何回も延期している再処理工場が、完成しない場合の代替策がない。県外搬出を確実にするため、国を挙げた議論をするべきだ」(敬称略)



