子どもから「ママなんか大嫌い!」「学校に行きたくない」といったひどい言葉を投げかけられたとき、親はどう対応すればいいのか。発達科学コミュニケーション代表で学術博士の吉野加容子氏は、表に出た言葉にそのまま反応するのではなく、その奥にある子どもの本心を受け止めることの重要性を指摘する。
「共感すること」と「言いなりになること」の違い
吉野氏は、子どもの本心を受け止めることは、子どもの言いなりになることではないと強調する。「学校に行きたくない」と言われたら必ず休ませる、「ゲームをやめたくない」と言われたら好きなだけやらせる、「ママなんか嫌い」と言われても何も伝えない――そういうことではない。受け止めるべきは行動ではなく、気持ちだ。
「もっとゲームをしたかったんだね」「学校に行くのがしんどいんだね」「嫌になるくらい、わかってほしかったんだね」――まず気持ちを受け止める。そのあとで、必要なことを伝える。「もっとやりたかったんだね。じゃあ、あと1つだけ見たら終わりにしよう」「学校がしんどいんだね。今日は何が一番つらいか、一緒に整理しよう」「嫌になるくらい怒っていたんだね。でも、嫌いという言葉は人を傷つけるから、落ち着いたら別の言い方を一緒に考えよう」この順番が大切だと吉野氏は言う。
子どもの脳が安心する順番で伝える
子どもの脳が安心していない状態で、ルールや正論を伝えてもなかなか入らない。反対に、先に気持ちを受け止めると、子どもの脳は少しずつ聞く態勢に戻っていく。つまり、共感は甘やかしではなく、子どもが次の言葉を受け取るための土台づくりなのだ。
特に、発達障害やグレーゾーンの子どもたちの中には、自分の気持ちを言葉にすることが苦手な子がいる。悔しい、不安、恥ずかしい、怖い、助けてほしい、わかってほしい――本当はそんな気持ちがあるのに、それを整理して相手に伝わる言葉にするまでに時間がかかる。だから、先に出てくるのは「やだ」「無理」「嫌い」「べつに」「うるさい」「知らない」「どうでもいい」といった乱暴な言葉や反発、拒否になる。
親はその言葉に振り回され、傷ついたり腹が立ったりすることもある。しかし、吉野氏は「この子は、本当は何をわかってほしいんだろう?」と一歩引いて考えることを提案している。子どものひどい言葉の裏にある本心に寄り添うことで、親子の会話はこじれることなく、むしろ深まるという。



