不登校の子どもたちが増える中、学校以外の居場所としてフリースクールが注目されている。青森県六ヶ所村にある「寺子屋TANQ」は、元教員の市川氏が運営するフリースクールだ。市川氏は「学校復帰よりも社会復帰を目指すべき」と語る。子どもたちはここで、答えのない社会的な問いに“体験的に”出会い、葛藤しながらも成長していく。
「夢のエネルギー」から福島の現実へ:子どもたちの葛藤
寺子屋TANQでは、最先端のエネルギー施設の見学を通じて、子どもたちが複雑な社会問題に触れる機会を設けている。市川氏はこう振り返る。「六ヶ所村で最先端の発電の存在を知り、生徒たちは『夢のエネルギーだ』と感動していました。その後に、東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故で人の住むことができなくなった土地の話を聞きます。生徒たちは、『これまで私たちが聞いた話はなんだったのか……』と戸惑い、葛藤します。」
このような経験を通じて、市川氏は「もしかしたら、大人が自分の価値観を伝えれば、子どもは『そうだな』とその場は納得するかもしれません。でも、大人だって答えのない問いを抱き続けることはとても多いですよね。だから、見方によって事実は変わるのだということを味わう時間になればいいなと思っていました」と語る。
「いい子」の呪縛と、正解のない学び
市川氏は「先生が期待する答えを先回りして考えて発言する子が“いい子”と扱われたりしますが、なんせこちらも答えを持ち合わせていないことですからね」と笑う。答えが出ない社会的な問いに“体験的に”出会うことは、子どもたちにとって「忘れない」学びとなるのではないかと市川氏は考えている。
寺子屋TANQに通う子どもたちはさまざまな背景を抱えている。そもそも、自分でも学校に行けなくなった原因がわからない子も多いと市川氏は言う。
「なぜ?」という親の焦りが「コースを外れるだけだ」に変わるまで
市川氏は、不登校の原因を明確に挙げられる子は対処できるが、多くの子は自分でも原因がわからないと指摘する。「『どうして?』と聞いて、明確に原因が挙がる子は対処できます。しかし、多くの子は自分でも原因がわからずに、苦し紛れに『テストがあるから嫌で』『◯◯の教科に出たくない』といったことを伝えます。すると、大人は原因を取り除こうとしますよね?しかし、原因に挙げたことを取り除いても登校はできない。だって、本当の原因は自分でもわかっていないのですから。その結果、だんだん言い訳を潰されていき、もっと苦しくなっているようなケースもあります」
保護者や周囲の大人は子どものことがどうしても心配になる。市川氏は、「『学校に行ってもらわないと困る』『勉強をまったくしなくて大丈夫か』など、さまざまな心配をするのは当然のことです。寺子屋TANQの保護者たちも最初はそうした不安を口にします。ですが、イベントに参加したり、通う子どもたちを見たりしているうちに、『親が想定していたコースから少し外れるだけだ』と思うようになっていくそうです」と語る。
社会の担い手を学校以外の場所でも育むために
寺子屋TANQの取り組みは、学校復帰だけがゴールではないことを示している。市川氏は「不登校の子どもたちにとって、社会とつながる感覚を取り戻すことが重要だ」と強調する。フリースクールは、子どもたちが自分のペースで学び、社会性を育む場として、今後さらに重要な役割を果たすだろう。



