フェリス女学院中学校・高等学校(横浜市)の中3生が昨年12月6日、NPO法人の主宰するバリアフリーイベントに参加し、視覚障害者のアシスト役を務めながら横浜のみなとみらい地区を歩いた。中3生全員がさまざまな形で参加するボランティア活動の一環であり、参加した生徒たちは、同校の教育理念「For Others(他人のために)」を実践する中で、障害者との共生について理解を深めた。
みなとみらいで視覚障害者と散策
このイベントは、障害者支援などに取り組むNPO法人「横濱ジェントルタウン倶楽部」が「みなとみらいの企業ミュージアム探検」と名付けて昨年12月6日に主催したもの。同校の中3の有志7人は、みなとみらい線「新高島駅」改札に集合すると、アシスタント役として視覚障害者とともに、2時間半にわたって日産グローバル本社ギャラリーや資生堂ビューティーパーク、ヤマハミュージック横浜みなとみらいの体験施設などを見て回った。
視覚障害者と一緒に街を歩くのは生徒たちにとって初めての経験だったといい、最初は慣れない様子だった。「あっちに行きましょう」と言うと、同行した「倶楽部」のスタッフ2人から、「あっちでは分かりませんよ」と注意を受けたり、「白杖を持って歩いている人は、肘か肩に触って1歩前を歩く」といった補助行為の基本を教わったりしながら、懸命にガイドした。
それでも午後4時に活動を終える頃までには、次第にコツをつかんだ。「最後はまるで友人同士のように、障害者の方々と笑顔で話をしていました」と、同行した当時の中3担任丸山照晶教諭は振り返る。参加した生徒の1人は、「今までは、街で困っている視覚障害者を見ても、どう声をかけていいか分かりませんでした。この日学んだことで、具体的に何をどうすれば自分が役に立つことができるか、理解できたように思います」と話した。
奉仕活動の伝統と新たなプロジェクト
このイベントへの参加は、同校の中3生が行ってきた奉仕活動の一環だ。キリスト教の教えに基づく「For Others」をスクール・ミッションとする同校は、伝統的に奉仕活動を重視しており、古くは1887年に外国人宣教師らと献金集めの活動をした記録も残っているそうだ。1978年には、有志生徒が老人ホームや児童養護施設などを訪ねる活動が定期的に行われるようになり、やがて中3生全員による活動として定着した。
そうした中で、昨年度の中3生たちは、有志による新しいプロジェクトを開始した。一つの大きなきっかけは、中2の夏の修養会だったという。詩人の谷川俊太郎が著した絵本「ともだち」を読んで感銘を受け、「世界には会ったことのない『友達』がたくさんいて、なかには困難を抱えながら生活している人もいるのではないか」と考えるようになったという。そして年明けの昨年2月に、視覚障害者を支援する施設「神奈川県ライトセンター」の青山しのぶ氏を講師に招き、「ただ同じ場所に存在する『共存』ではなく、共に励まし合う『共生』を実現させよう」という話を、共感をもって受け止めた。
中3に上がって、「学んだことを行動につなげたい」という声が上がり、有志20人が昼休みなどに集まってミーティングを重ねた。さらに、青山氏に紹介を受けた「横濱ジェントルタウン倶楽部」を訪ね、視覚障害者支援の現場に足を運んで支援や配慮のあり方を学んだことが、昨年12月のみなとみらいでの散策につながった。
活動の広がりと生徒の成長
今年の3月19日にも、生徒たちは「倶楽部」スタッフとともに、野毛山動物園(横浜市)で視覚障害者との散策を実施した。「どんな動物が何匹いて、何をしているところか教えてくださいね」などの質問を受け、生徒たちは分かりやすい説明に努めながら丁寧に案内していった。参加した生徒たちは、視覚障害者と行動を共にする中で、必要なアシストについての理解を深めたそうだ。
生徒たちはこのほか、「触地図」の製作にも取り組んでいる。取り上げた場所は、自分たちにとってなじみ深い地元・元町商店街で、平面に凹凸や点字を取り入れながらカフェや洋食店などを記入していく。「絵が得意な生徒のイラストを入れて見た目にも楽しいものとし、視覚障害者だけでなく、一緒に使える地図にしました。これも、『共生』の考えを反映したものです」と、昨年度の中3を担任した原田純子教諭は説明する。
「倶楽部」と連携しての活動以外にも、横浜市の障害者スポーツ文化センター「ラポール」と提携し、発達障害を持つ子供たちとバスケットボールを楽しんだり、巨大な壁面に絵を描くイベントに参加したりしている。昨年3月には、障害者支援拠点の「ラポール上大岡」で、プロの芸術家と障害を持つ子供らと一緒に、「#芸術交差点」と題する作品展に参加。学校全体に呼び掛け、中高生合わせて200点ほどの出品作が集まった。
この作品展について「中3生から始まった活動が全校に広がり、芸術作品を制作するという自分の得意分野を生かしながら他者のために動く、『For Others』を皆で実践する機会となりました」と丸山教諭は評価する。中3奉仕活動に参加してきた生徒たちからは、「奉仕活動を通して、自分がいかに周りに支えられているかが分かり、人とのつながりの大切さを実感しました」「奉仕活動を通して学んだ『For Others』の精神は、将来どんな職に就くとしても、常に心の中に持ち続けたいと思います」などの声が上がっているという。
昨年度の中3有志プロジェクトのスローガンは、「Give of Your Best」(自分の最高のものを与えなさい)だった。礼拝などで親しんでいる賛美歌の一節から取った言葉だという。「奉仕活動によって、自らの賜物、すなわち得意なことを人のために役立て、社会の中で大切な役割を果たすことができると気付き、高校進学を前に、自分に対する自信をさらに深めたようです」と、丸山教諭は生徒たちの成長を語る。
学年全体での奉仕活動はいったん区切りを迎えたが、関わりのあった各施設からは継続を望む声も寄せられ、高校でも有志のグループによって活動が続いているそうだ。



