クルーズ船の和歌山県内寄港が近年急増している。2025年には39件で過去最多を更新した。和歌山下津港の和歌山港区(和歌山市)や新宮港(新宮市)への寄港が目立つが、串本町など他の地域に寄港する動きもあり、周辺自治体が経済波及効果に期待を寄せている。
寄港数は回復基調、2025年に過去最多
県港湾空港振興課によると、2015~2019年の寄港数は年8~17件で推移していた。新型コロナウイルスの影響で2020年は4件だったが、2021年以降は回復基調に転じ、2025年は39件と過去最多を記録した。内訳は和歌山下津、新宮両港の各18件がほとんどを占めた。2026年も県内に31件の寄港が予定されている。
国土交通省産業港湾課によると、クルーズ船の寄港は世界的に増加傾向にある。経済成長に伴い、中国や東南アジアの利用者が増加。船会社が富裕層から一般層向けまで多彩な企画を用意するようになったことも背景にあるという。
誘致活動の活発化と成果
県は誘致活動を活発化させている。東京、静岡、和歌山、高知、鹿児島の5都県は2020年、連携して寄港を誘致する枠組みをつくった。2024年にスペイン、2025年にはドイツで国際見本市に出展し、船会社などへの働きかけにも取り組んだ。県単独でも船会社の視察を支援し、行程を検討しやすくなるように観光地を案内したり、地元自治体などと調整したりして受け入れ態勢を構築している。
昨年はシンガポールの船会社が運航するクルーズ船が和歌山下津港に7回寄港する成果につながった。乗客はバスで和歌山市駅などを訪れ、同駅の商業施設では桃など農産物の売れ行きが好調だったという。和歌山市観光課の担当者は「大勢が市内で消費してくれ、大変ありがたい。滞在時間は短いが、市の魅力に触れ、リピートしてもらえれば」と期待を寄せる。
串本町への初寄港と今後の展望
11月には、商船三井クルーズが運行するクルーズ船「三井オーシャンサクラ」が初めて串本町を訪れる。町内には着岸できる岸壁がないため、船は沖合に停泊。ボートで乗客を漁港に送り届け、バスなどで周辺の観光地を巡る予定だ。貨物船も利用する和歌山下津、新宮両港で、クルーズ船の受け入れが限界に近づく中、県が船会社側に、串本町などへの寄港を打診していたという。
県港湾空港振興課の森下元喜さんは「近年は船会社が手軽なプランを設けるなどし、幅広い層がクルーズを楽しめる環境が整ってきている」と解説する。また、「クルーズ船なら首都圏を出発して一晩眠れば、ちょうど県沿岸に着く。今後も誘致に取り組み、海からの新たな人の流れを生み出していきたい」と意気込む。
実際の寄港例と乗客の声
和歌山下津港には7月1日午前8時頃、乗客約100人が乗ったクルーズ船「三井オーシャンフジ」が寄港した。同船は6月28日に博多港(福岡市)を出港し、韓国の釜山港を経て和歌山下津港に着いた。7月1日午後4時頃に出港し、清水港(静岡市)に寄った後、3日には横浜港に入って航海を終えた。
和歌山下津港で下りた乗客らは、船会社が用意したバスやタクシー、レンタカーなどで県内を観光。バスは紀三井寺や和歌山城、和歌山マリーナシティの黒潮市場を回った。県港湾空港振興課によると、レンタカーを借り、白浜町や高野町へ足を延ばした乗客もいたという。
新婚旅行で乗船したという鹿児島市の男性(31)は「クルーズ船は日程が1週間程度で、新婚旅行にちょうどいい」と話した。妻(28)は「黒潮市場で見たマグロの解体ショーは迫力満点だった。お土産に梅干しも買えてよかった」と笑顔だった。
和歌山市観光課の北野勇貴主事は「多くの人に市の魅力に触れてもらえる貴重な機会。これを機に再訪したり、特産品を通販で手に入れたりして、地域への関わりを続けてもらえれば幸い」と期待を込めた。



