ベストな睡眠時間は8時間ではない…質の高い睡眠で脳と腸を若返らせる新常識
ベストな睡眠時間は8時間ではない…質の高い睡眠で若返る新常識

睡眠の質が生活習慣病リスクを左右する

「よく寝た日は元気」「寝不足だと調子が悪い」――誰もが経験するこの感覚は、科学的にも裏付けられている。睡眠は体内リズム(サーカディアンリズム)の要であり、質の悪い睡眠は集中力低下だけでなく、生活習慣病、うつ病、心臓・血管疾患のリスクを高める。さらに近年の研究では、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβが、睡眠中に脳のクリアランス機能によって分解・排出されることが明らかになっている。睡眠不足が続くとこの機能が弱まり、アミロイドβが脳に蓄積しやすくなるのだ。

寝具改善でアミロイドβ減少、腸内環境も改善

同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターの米井嘉一教授の研究グループは、寝具メーカーの西川産業と共同で、睡眠の質と認知症・腸内環境の関連を調査した。睡眠に悩みを持つ女性12人を対象に、寝具を改善する前後で脳と腸内環境を比較したところ、睡眠の質が改善した後にはアミロイドβの蓄積が減少していた。つまり、よく眠れるようになると脳の老廃物排出能力が高まるのだ。さらに腸内細菌の分析では、睡眠改善後に腸内環境が「認知症のない人」に近いパターンへと変化した。国立長寿医療研究センターのデータによると、認知症のない人は善玉菌(酪酸産生菌・乳酸産生菌など)が多く、認知症のある人は悪玉菌やバクテロイデスが多い傾向があり、今回の結果はこれと一致していた。

メラトニンが鍵、朝の光でリズム調整

これらの研究から、睡眠の質を高めることが脳の老廃物排出(クリアランス)を助け、腸内環境を整え、結果的に認知症予防につながることが示唆される。「よく眠ること」は脳と腸の両方の若さに不可欠であり、まさに“究極のアンチエイジング”といえる。その鍵を握るのが睡眠ホルモンのメラトニンだ。メラトニンは「夜が来た」と体に知らせ、自然な眠りを促す。夕方暗くなると脳の松果体から分泌が始まり、体温を下げて眠りやすい状態に導く。分泌は夜中にピークを迎え、朝の光を浴びると止まり、そこから約15時間後に再び分泌が始まる。このリズムに合わせた生活がメラトニンを正常に働かせ、睡眠の質を高める。逆に睡眠の質が悪い人はメラトニン分泌も乱れがちだ。最近の研究では、メラトニンには催眠作用だけでなく、抗酸化作用や免疫調整など健康を守る多様な機能があることもわかっている。

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睡眠時間は7時間前後が最適、長すぎもリスク

では、理想的な睡眠時間はどのくらいか。米井教授によると、睡眠時間が短すぎても長すぎても死亡リスクは高まる。特に7時間半以上寝る人は死亡率が1.4倍になるというデータもある。認知症予防や健康長寿のためには、睡眠時間よりも質を高めることが何より重要だ。質の高い睡眠を得るには、規則正しい生活リズム、適度な運動、就寝前のリラックス習慣などが有効とされる。

ストレスリセットで深い眠りを

ストレスは睡眠の質を大きく低下させる。日中のストレスを上手にリセットし、副交感神経を優位にしてから床につくことが深い眠りへの近道だ。例えば、就寝前にぬるめの入浴や軽いストレッチ、読書などを行うとよい。また、寝室の環境(暗さ、静かさ、温度)を整えることも重要である。

米井教授は「睡眠の質を高めることは、脳と腸を若返らせ、認知症予防につながる。よく眠ることが最高のアンチエイジングだ」と述べている。

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