ネパールと中国の国境地帯で発生した大規模な土石流は、発生から72時間が経過した29日、行方不明者約2500人の消息を待つ人々が不安を募らせている。両国の当局は28日、中国チベット自治区のせき止め湖が決壊したとの情報を受け、救助活動を一時中断させた。
被災地で同僚を思う所長の悲痛な声
ネパールのラスワ郡ティムレにある国境沿いの税関事務所で働いていたラジェンドラ・ドゥンガナ所長(56)は26日朝、突然の強い揺れに襲われた。周囲から「洪水だ!」との叫び声が飛び交い、事務所を飛び出した。高台に駆け上り、間一髪で被害を逃れた。眼下の建物は瞬く間に土砂にのまれていった。
上司に電話で連絡したが、ほどなく電話は不通となった。当時、事務所にいたのは職員40人や貿易関係者ら。職員15人とは現在も連絡がつかない。ドゥンガナさんは電話取材に「同僚を思うと胸が締め付けられる」と嘆いた。
犠牲者と救助活動の現状
ネパール防災当局の発表では、28日夜時点で死者は579人、行方不明者は1924人に上る。中国側の死者は29日未明時点で7人、行方不明者は554人。二次災害の恐れから、救出活動は思うように進んでいない。
婚約者を待つ女性の願い
首都カトマンズに住むグラス・タマルさん(23)も、被災現場近くで働いていた婚約者の男性(24)を捜し、病院を訪ね回っている。負傷者の中に名前がないか確認しているが、まだ見つかっていない。取材に対し、「10月には一緒に欧州に渡り、結婚する予定だった」と涙をこぼした。
婚約者は、ラスワ郡マイルン村の水力発電所で車の運転手として働いていた。交際開始から1年。欧州での職場も決まり、渡航書類の準備も進めていた。
26日朝、土石流の発生直前に携帯電話でビデオ通話をしたのを最後に、連絡が途絶えた。100回以上電話をかけたがつながらない。現場の上司から、土石流に巻き込まれたと伝えられた。「9割方ダメだったとしても、望みは捨てていない」。タマルさんは携帯電話に残る婚約者の画像を見つめながら、気丈に話した。



