熱海市伊豆山の土石流災害から5年が経過した。地元消防団の分団長・松本早人さん(51)は「死傷者をもう二度と出さない」と決意を新たに、新たな詰所を拠点に地域防災の最前線で活動を続けている。
あの日、逃げろと叫び続けた
5年前、松本さんは退院直後で自宅静養中だった。消防団のグループチャットで送られてきた写真に、詰所付近に迫る茶色い土砂とがれきの姿が写っていた。「行かなきゃ」と車に飛び乗った。
当時は車両班長でポンプ車を担当。詰所に急行したが、1階の天井近くまで泥が流入し、近づけなかった。すぐに自宅へ戻り、近隣住民に向かって「逃げろ、逃げるんだ」と叫び続けた。住民は土石流に気づいておらず、困惑した様子だったが、松本さんは使命感で叫び続けた。「まだ人がいることはわかっていた。使命感でとにかく必死だった」と振り返る。
予想は最悪の形で的中した。「ドーン」という大きな音とともに、目の前を土石流が流れ、被害が拡大した。
交錯する思いと新たな拠点
あれから5年。松本さんの心には「もっと早く避難を呼びかけていれば、被害を減らせたかもしれない」という悔いと、「自分がやれる最大限のことはやった」という思いが今も交錯する。災害関連死を含めて28人が犠牲となった。尊い命が失われたあの日を忘れたことはない。
被災後は公共施設を仮の詰所として活動を続けてきたが、今年3月に新しい詰所が完成。土砂の中から見つかった思い入れのある団旗や旧詰所の看板を設置し、教訓を後世に伝える拠点とした。
分団長としての決意
今年4月、松本さんは分団長に就任。19歳から50歳代の団員約30人を束ねる立場となった。先月発生した台風では、新しい詰所を拠点に2時間ごとの巡回を実施するなど、意欲的に活動している。
松本さんは「死傷者をもう二度と出さないようにしたい」と強調する。災害を経て強まった思いを胸に、分団を率いてより早く的確な避難呼びかけができるよう、日々鍛錬を積んでいる。



