横浜市南区の阪東橋駅前にある「横浜橋通商店街」は、外国人が八百屋や魚屋を開く“裏横浜”として知られる。深夜にはカニが徘徊することもあるというこの商店街で、多文化共生のリアルな姿が見えてくる。
人情に惹かれて移り住む人々
街の変化や歴史を楽しむ声がある一方で、この街の「人情」に惹かれて移り住む人もいる。革製品のリペア・フルオーダー専門店「ダンテラード バグ」(横浜市南区白妙町1-3-16)を営む伊藤暖さんは30歳だ。秋田県の山間部の出身で、物件探しでは鎌倉なども候補にしたが、最終的にこの街を選んだ理由をこう語る。
「この下町の雰囲気がとても気に入ったんですよ。店をオープンして今年で5年目ですけど、街の人たちにはすごく良くしてもらっています。近所のお年寄りとかに、”元気にやってる?”とか声をかけてもらったりして、とても居心地がいいですよ」
外国人が多い街に本屋がある理由
近所の人たちからは「ダンちゃん」と呼ばれ、革製品とは関係なく「電化製品を直してほしい」「看板を作ってほしい」と頼まれれば手伝いに行くという。
「もっとも、私はどこへ行っても、周囲の人と関係をつくろうとする人間ではある。それでも、この街はそうした関係を受け入れてくれる場所だった」と伊藤さんは振り返る。「今後もしばらくは、この街で店を続けていきたい。とてもいい街だと思っています」
横浜橋通商店街の裏手に、2022年11月に開店した独立系書店「本屋 象の旅」(横浜市南区浦舟町1-1-39)がある。店主の加茂和弘さんは、不動産会社を辞めた後、当初はカフェを始めるつもりだった。ところがコロナ禍に入り、未経験で飲食店を開くリスクを考え直した。
「もともと本が好きだったので、じゃあ本屋をやってみようかな、と舵を切った」
自宅から通える範囲で、家賃や店の広さを考えながら物件を探し、いくつもの街を歩いた。「ここがベストというより、エリアも物件も含めて、トータルでここぐらいしかやれそうだと思える場所がなかった。消極的な選択ではありますね」
【横浜の裏側で広がっていくコミュニティ】



