「3000億円の大発明」が1億人の健康被害に…ハイオクなのに車で使用厳禁となった「悪魔の金属」の名前
「3000億円の大発明」が1億人の健康被害に…悪魔の金属

20世紀のアメリカで、車のエンジン音を静かにするためにガソリンに添加された鉛が、全世界で1億人の健康被害を引き起こした。科学教養系YouTuberの九和律氏と名古屋工業大学名誉教授の齋藤勝裕氏が、その歴史を解説する。

原爆製造計画に参加した若き科学者

時は20世紀。アメリカで、とある金属が世界を一変させました。その金属とは「鉛」です。鉛が、世界一の公害を引き起こしたのです。

1944年、アメリカにクレア・パターソンという若い科学者がいました。彼は、大学の修士課程を卒業してすぐ、「マンハッタン計画」で働くことになりました。

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マンハッタン計画とは、第二次世界大戦中のアメリカ初の核兵器研究プロジェクトです。原子爆弾は、ウランという原子に中性子を勢いよくぶつけ、核分裂させることによるエネルギーで爆発を起こす爆弾のことです。

ウランで「地球の年齢」を暴く

ウランが不安定なのは、ウランの原子核内が陽子でミチミチに詰まっているからです。ウランの原子核内には実に92個の陽子が詰まっており、原子核はプラスの電気を持っているため反発し合う92個の陽子を、「核力」という力で無理やり押さえつけています。

たとえるなら、ウランはパンパンに膨れ上がった風船のようなものです。中性子の衝突など、何かの刺激があれば破裂してしまいます。

さて、パターソンはこのウランの研究者でした。そしてなんやかんやあって、このウランを利用した爆弾「原子爆弾」開発は成功し、プロジェクトは終了しました。

その後、優れた科学者であったパターソンは、ウランの不安定性をうまく利用した、画期的な研究を思いつきます。彼は、ウランの不安定性から、地球の年齢を測定出来ることに気がついたのです。

うるさいエンジン音を黙らせるには…

しかし、その研究の過程で、パターソンは「予測以上の鉛」を発見します。この鉛が、後に世界を揺るがす公害を引き起こすことになるのです。

当時、自動車のエンジンは「ノッキング」という現象を起こし、大きな騒音と振動を発生させていました。これを解決するために、ガソリンに「四エチル鉛」という添加物が加えられました。この添加物は、エンジンのノッキングを抑え、出力を向上させる効果があり、まさに「3000億円を生む大発明」と呼ばれました。

「最高の金属」だけど人体に有害

しかし、四エチル鉛は人体に極めて有害でした。鉛は体内に留まり、ほぼすべての臓器を蝕むことが知られています。発見者自身も安全性を主張しましたが、後に彼自身も鉛中毒に苦しむことになりました。

この鉛の害は広がり、全世界で1億人が健康被害を受けたとされています。そして、この鉛を広めた人物は「世界一地球環境を破壊した男」とも呼ばれています。

危険性を知りながら、偽って広めた罪は重いと言えるでしょう。

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