ずさん捜査で16歳少女が衰弱死、国と県を提訴 初弁論で争う姿勢
ずさん捜査で16歳少女衰弱死、国と県提訴 初弁論

兵庫県内の障害者福祉施設に勤務していた少女=当時(16)=が、利用者への暴行容疑で逮捕・勾留された後に不起訴となり、その後、精神的ショックによる摂食障害で死亡した事案で、遺族が国と県に約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が21日、神戸地裁(鳥飼晃嗣裁判長)で開かれた。国と県側は請求棄却を求めた。

原告側は違法捜査を主張

原告側は「暴行の申告自体が事実無根」として、警察や検察の違法捜査を主張。少女の母親は「娘に謝ってください」と訴えた。国と県側は捜査の違法性や少女の死亡との因果関係を否定し、「(捜査機関の)調べは国が責任を負うものではない」とした。

逮捕から死亡までの経緯

亡くなった少女、るなさん(仮名)の逮捕容疑は昨年2月、勤務先の福祉施設であったイベント中に、利用者のあごを複数回手のひらで押さえつけたとしている。訴状などによると、その様子を見ていた別の知的障害のある女性が市役所に通告。るなさんは6月に兵庫県警に逮捕され、18日間の勾留後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症、12月に死亡した。

母親の思いと今後の裁判

会見でるなさんへの思いを語った母親は「娘が(障害者へ)してきた支援は素晴らしかった」と述べ、警察と検察へは、容疑者が否認するほど身柄拘束が長引く「人質司法」の問題にも向き合うよう訴えた。「『やってない』と訴える人の声を正面から聞いてください。命と尊厳を守ることを忘れないでください」と語った。

るなさんは中学卒業後、母親と同じ支援の仕事に就いた。意思疎通を図ることがほとんどできない重度の障害者が多い中、プライベートの時間でも交流を重ね、信頼関係を築いてきた。「家族と向き合うように心を込めて接していた」と母親は振り返る。釈放後はすぐに仕事に復帰しようと、母親に電動車いすを用意してもらい、疲弊した体でも「できるだけ自分で動いて、(利用者に)ご飯を食べさせてあげたい」と話したという。母親は「今まで一度も仕事のことで褒めたことはなかったけど、るながもっと支援の仕事で活躍する姿を見たかった」と涙を流した。

原告側の弁護士は、るなさんの取り調べの様子を録音・録画したデータなどの捜査資料の公開を被告側に求めており、「16歳少女に対してどんな調べが行われたのか。裁判を通して国民にも共有されるべきだ」と訴えた。