お好み焼きチェーン「千房」(大阪市)の中井政嗣会長(80)が鳥取市のとりぎん文化会館で講演し、同社の元受刑者らへの就労支援の取り組みを振り返り、更生支援の大切さを語った。
創業以来の「誰でも迎える」姿勢
同社は1973年創業。現在、関西を中心に国内外に62店舗があり、従業員は約1100人。2009年以降、73人の元受刑者や少年院出院者を受け入れてきた。店長になった人もいるという。
きっかけは創業期に遡る。人手が不足していたこともあり、「一緒に働いてくれる人なら誰でも迎える」と学歴、経歴を問わずに採用。かつて暴走族に所属していた人もいた。
法務省からの打診と葛藤
2008年、それを知った法務省から受刑者らの就労支援の打診があった。受刑者を知ろうと視察した山口県美祢市の美祢社会復帰促進センターでは、担当者から「出所者の約半分が再犯で戻ってくる。そのうちの約7割が無職。職に就くことが再犯予防につながるので、ぜひ雇用してほしい」とお願いされた。
会社の役員会では、元受刑者の雇用について「賛否両論だった」という。「『お客さんが怖がって来てもらえなくなったら、会社が潰れますよ』という声もあった。でも、『いいことをしている』と応援してくれるお客さんもいるはずだと思った」と振り返る。最終的に「何か起こったら、全部自分が責任を取る」と覚悟を決めたという。
「雇用主がオープンにすること」へのこだわり
中井会長は「雇用主がオープンにすること」にこだわった。当時から出所者らを雇用する「協力雇用主」の制度があったが、「どういう会社が、どういう人を雇用しているのかは伏せられていた」という。「元受刑者の受け皿は社会。社会の思い込みや偏見を少しでも取っ払うためには、千房が元受刑者の就労支援をしていることを社会に見せることが、何よりも大事だと思った」と話す。
テレビや新聞の取材に応じ、刑務所での受刑者との面接時もカメラを入れた。「お客さんが怖がって来てもらえなくなったら」と心配もしたが、放送後「匿名で1人から嫌がらせがあっただけだった」と振り返る。
「職親プロジェクト」の広がり
中井会長は2013年、就労だけでなく、住まいや仲間作りなども支援する「職親プロジェクト」の発起人となった。日本財団と関西の7社でスタートした同プロジェクトは、参加企業数が約1500社になり、計2000人以上の元受刑者や少年院出院者らの就労につながった。
「反省は1人でできても、更生は1人ではできない」と話した中井会長。講演の最後に「元受刑者や少年院出院者を雇用することが当たり前の社会を目指したい」と訴えた。
講演会は7月31日、県と鳥取刑務所の主催で開かれた。



