オフィス男性の足元、革靴から「革靴風スニーカー」へ…健康意識やコロナ禍で軽装化加速
オフィス男性の足元、革靴から革靴風スニーカーへ 軽装化加速

オフィスでの男性の足元が変わりつつある。コロナ禍をきっかけに軽装化が進み、機能性を重視して旧来の革靴から「革靴風スニーカー」などに履き替える人が目立ってきた。伝統的な製法にこだわってきたメーカーは新しい需要に応えようと、商品開発に取り組んでいる。

高機能モデル、売り上げ拡大

大阪・梅田の商業施設にある革靴大手「リーガルコーポレーション」(千葉県)の直営店「REGAL リンクス梅田」では、商品棚に一見して革靴だが、靴底はスニーカーの作りの「ドレススニーカー」が並ぶ。片足でおよそ390グラムと、一般的な革靴より100グラム以上軽い。堀川栄店長(47)は「『軽くて楽な靴を』と、40~50歳代の方が買うことが多い」と話す。

ドレススニーカーの開発をリーガルが始めたのは2019年。現在、防水や透湿性に優れた高機能モデルなど約13種を展開する。売り上げに占める割合は非公表だが、右肩上がりで拡大しているという。

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「スニーカー通勤」推進で自由度高まる

国内外の靴ブランドが展開する「革靴顔」のスニーカーが支持される一方で、伝統的な革靴の需要は減少傾向にある。経済産業省の調査によると、25年に国内で生産された紳士用革靴は約126万足で、09年(約545万足)の2割強に減った。コロナ禍での落ち込みは大きく、18年の約300万足から3年間でほぼ半減した。

ウェブサイト「革靴ジャーナル」を運営するジャーナリストの楠美皓平さん(39)は、「仕事用に需要の多かった数万円の価格帯の売れ行きが落ち込んでいる。『スーツには革靴』の方程式が崩れ、革靴を履く機会が減った」と語る。

変化のきっかけの一つは、17年にスポーツ庁が健康増進を目指して提唱した「スニーカー通勤」だ。歩きやすい靴の着用を促したことで、オフィスワーカーの足元の自由度が高まった。コロナ禍では、ビジネスの現場でオンラインが多用され、通勤時だけでなく、職場でもスニーカーなどで過ごす人が珍しくなくなった。一見して革靴と大差ないドレススニーカーも注目されるようになった。

この傾向はコロナ禍後も続いている。鉄道会社など社員の身だしなみに厳しい大手企業の間でも、疲労軽減などを理由にスニーカーの着用を認めるケースが出始めている。

新技術で需要に応える

革靴業界は転換期にある。リーガルは2月、定番の革靴やオーダー品の製造を担う子会社「チヨダシューズ」(千葉県)の操業停止を発表。1世紀の歴史に幕を下ろすことになった。

機能性重視や健康志向の需要に、新技術で応える靴メーカーもある。1921年創業の「マドラス」(名古屋市)は、医療現場などで用いられる特殊素材の中敷きを開発。血行を改善し、疲労を抑える「リカバリー効果」を掲げて2023年に発売、特許を取得した。この技術を紳士靴の105種(8月6日時点)に導入。今後も拡大する方針で、同社PRコミュニケーション部は「革靴は疲れる、という固定観念を変えていきたい」としている。

革靴愛好家、靴磨きの腕競う

「仕事には革靴」という常識は変わりつつあるが、趣味として革靴を愛好する人たちがいる。7月25日、高島屋大阪店(大阪市)で、靴磨きの競技会「SHOESHINE GRAND PRIX」の中部関西地区大会が開かれた。11人の参加者は、靴メーカーが提供した新品の靴を、「ワインの試飲会に臨む30代ソムリエ」「旧友と会う50代海外駐在員」などのテーマで磨き上げた。

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優勝した東京都の会社員、江口新介さん(49)は休日は靴と向き合うといい、「靴磨きは人生を豊かにしてくれる」と笑顔を見せた。11月に東京で開かれるグランドファイナルでは、江口さんら六つの地区大会の優勝者が、プロの靴磨き職人たちと腕前を競う。

大会は、百貨店で革靴のバイヤーなどを務めた田代径大さん(41)が「靴と靴磨きの文化を発信したい」と、靴磨き職人の第一人者として知られる長谷川裕也さん(42)と企画。初回の2018年に約200人だった観客は、25年大会で約2500人に増え、大会の動画の閲覧回数は2万回を超えた。大会で解説と審査員を務める服飾研究家の飯野高広さん(59)は、「革靴がビジネス用途一辺倒から卒業し、意思をもって選ばれる存在に変化している。日本の靴文化は成熟しつつある」と語る。