熊本県八代市の日本製紙八代工場で、地震による煙突の倒壊で従業員ら9人が死亡した事故を受け、同社の瀬辺明社長は5日に記者会見し、「本当にこれ以上ない悲しくつらい出来事」と述べた。犠牲者9人はいずれも事務所でオフィスワーク中だったという。
地震発生直後に煙突が直撃
同社の説明によると、地震発生時、工場内には従業員や関連会社、取引先の計414人が勤務していた。激しい揺れとともにすべての電源が喪失。地震発生とほぼ同時に煙突が中央部分から折れ、9人がいた事務所を直撃した。
同社は救助を要請しようとしたが、110番も119番もつながらず、約40分後に被害を免れた従業員が消防で勤務する親族に連絡を取って助けを呼んだという。
救助活動と犠牲者の詳細
現場では消防や自衛隊員らが手作業でがれきを取り除き、7月30日までに取り残されていた11人が救助されたが、9人の死亡が確認された。八代広域行政事務組合消防本部によると、9人は30~60歳代の男性という。
会見に同席した山辺義貞工場長は、「正直、何もできなかった」と振り返った。
点検体制と今後の対応
同社によると、80メートルの煙突は日常的に外観点検を行い、1997年と2006年には大規模な点検を実施。2016年の熊本地震で別の煙突が損傷したため、補強工事を行ったが、今回倒れた煙突の詳細な点検は実施しなかったという。
会見で同社は、地震当日の点検結果や耐震性については「調査中」と回答。調査委員会を通じて明らかにする意向を示した。経済産業省からは、被害がなかった煙突も含めて点検するよう指示があり、必要に応じて補強や更新を行うという。
地域への影響と再建への決意
八代市は熊本県第2の都市で、同社などの企業城下町として発展。八代工場は1924年、前身の一つ「九州製紙」の工場として操業を開始した。工場内は他の建物の損傷も激しく、操業再開の見通しは立っていない。
自身も八代工場で勤務した経験があるという瀬辺社長は、「閉鎖は現時点では考えていない」とし、「地域の人に支えられて今日まで成長してきた。会社としてどう防災を強化するか考えないといけない」と話した。



