熊本県で最大震度7を観測した地震で、文化財の深刻な被災状況が明らかになってきた。県によると13日午後2時時点で被害報告は歴史的建造物や城跡など234件。国の特別史跡・熊本城跡(熊本市)など2016年の熊本地震で被災して再び被害を受けた文化財もあり、復旧には時間がかかりそうだ。
老舗旅館「金波楼」で正門や塀が倒壊
八代市中心部から南に約10キロ、日奈久温泉街にある1910年創業の老舗旅館「金波楼」の前で、女将の松本美佐緒さん(72)は肩を落とした。「大変なことになってしまった。大事に守ってきた門がなくなるなんて」と語った。
今回の地震で八代市は震度6強を観測し、金波楼では国登録有形文化財(建造物)の正門が倒壊し、塀の大半が崩れた。創業時からの風情をとどめる木造3階建ての本館は壁の所々にひびが入り、80畳の広間がある木造2階建ての大広間棟では、廊下に割れた窓ガラス片が散乱していた。
日奈久温泉の歴史と再建への道のり
日奈久は室町時代から続くとされる温泉地で、旅館の名は、本館3階から八代海に沈む夕日を浴びて金色に輝く波が展望できたことに由来する。大正期に徳富蘇峰・徳冨蘆花兄弟、昭和初期に種田山頭火が立ち寄ったという歴史をもつ。
2016年の熊本地震でも、建物の壁にひびが入った。壁の補修に加え、地震に備えて大広間棟の瓦約4000枚を軽量化するなどしたため、修繕に1億円以上を要し、約3000万円を借り入れた。
今回の地震で被害拡大、予約はすべてキャンセル
その半分を返済したところで迎えた今回の地震。館内の浴場は湯が出なくなり、年内の予約はすべてキャンセルすることを決めた。松本さんは「先代が残してくれた貴重な文化財を大切に守ってきたが、10年前の地震とは比較にならないほど被害が大きい」と話す。
今回の地震では県南部を中心に、木造の建造物に大きな被害が出ている。震度7を観測した宇城市では国登録有形文化財10件が被災。町家「新麹屋柏原家住宅」では、大正時代の門と塀が倒壊。主屋や離れも傾いた危険な状況だ。



