広島市で6日、平和記念式典が開かれ、過去最多の121の国・地域の大使らが出席した。高市首相は「我が国は、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を続けていく」と述べた。長崎市では9日に式典が開催される。
原爆投下から81年の歳月が流れ、被爆した記憶の風化が進んでいる。核保有国が他国を武力攻撃する事態が広がり、核兵器の使用をほのめかす指導者までいる。かつてない危機的状況だ。
被爆者の減少と記憶の継承
全国の被爆者はこの10年間で7万人以上減り、約9万人となった。平均年齢は86歳を超え、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)は、来年6月をめどに組織の存続可否を判断するという。
被爆者の証言をじかに聞く機会は失われつつある。国や自治体は民間団体などと協力して、次世代への継承を急がねばならない。
東京大の大学院生は今春、米ニューヨークで、VR(仮想現実)を使って、被爆直後の広島にいるかのような体験ができる取り組みを行った。最新技術で甚大な被害を実感できたといい、新しい継承の形として有効だろう。
原爆ドームの保存
原爆ドームは今年、世界文化遺産登録から30年を迎えるが、風雨にさらされて劣化が進む。広島市は今年度、新たな対策の検討に着手した。建設当時の材質に近いレンガなどを使い、壁面への浸水を防ぐ手法を考える。
原爆ドームは被爆の象徴である。専門家の知見を生かし、保存のため適切な方策を探りたい。
核軍縮の逆行と日本の役割
世界では、核軍縮に逆行する動きが目立つ。冷戦時からの流れで締結されていた、米国とロシアの「新戦略兵器削減条約(新START)」が失効した。「核拡散防止条約(NPT)再検討会議」は5月、イランの核問題を巡って米露などが対立し、3回連続で決裂した。
日本は、核戦力の増強を進める中国、ロシア、北朝鮮に囲まれている。中国は先月、核搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。日本の安全を守るためには、米国の「核の傘」に頼らざるを得ないのが現実だ。
唯一の被爆国である日本は、核による惨禍の実相を国内外に発信し、核軍縮の機運を一層高める責務を果たさなければならない。日本は核兵器によって甚大な被害を受け、今も核の脅威にさらされている。このように厳しい環境に置かれた国として国連などで、核のない世界の実現を訴え続けていくことに意義がある。



