「人間のクズ」発言、「意図的な無視」…浜松市長のパワハラ問題から考える組織リスク
浜松市長のパワハラ問題から考える組織リスク

浜松市の山中伸弥市長による職員へのパワーハラスメント(パワハラ)が話題を集めています。第三者調査で複数のパワハラ行為が認定された山中市長は、8月13、14日に開かれた浜松市会の総務委員会で「重く受け止めている」「生まれ変わるよう、信頼を回復できるよう努力する」と述べました。

第三者調査で認定された「人間のクズ」などの発言

浜松市が7月30日に公表した「浜松市長の言動にかかる第三者による調査」の報告書によると、山中市長は職員を「ダチョウ」「人間のクズ」と呼んだり「バカ」「アホ」などと発言したことが明らかになっています。

さらに「書類を投げつける」「脅迫ポーズ」(手で拳を作り、脅威を向ける仕草)を取る「意図的な無視」なども認定されました。

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これらが事実であれば、今回の山中市長の一連の行動は明らかにパワハラに該当します。

変化する職場環境とパワハラの境界線

一方で、職場におけるハラスメントへの社会的な認識が大きく変化する中、パワハラと認定されないよう上司が萎縮し、業務指示や部下指導が難しくなっているという悩みの声も聞かれてきます。

パワハラはなかなかなくならない。しかし「指導できない軟弱上司」も急増している——現代の職場で求められる業務指示の在り方について考えると、見えてくるものがあります。

「ポンコツ」「クズ」「切腹だ」——浜松市長のパワハラ認定が示す職場の変化。ハラスメントという言葉が浸透していなかった時代の職場では、経営者や上司など、強い立場にいる者が好き勝手に振るっても、問題として扱われずに済んでしまうことがありました。性的な言動で相手を不快にさせるセクシュアルハラスメント(セクハラ)なども、今より問題視されにくい時代でした。

ただ、当時はそれが当たり前とされる職場環境でもありました。仕事で失敗した時に「ポンコツ」などと厳しい言葉でののしる上司がいても、職場であまり問題視されなかったため、反発するのではなく聞き流すテクニックを磨く部下の姿も見られました。

「上司に逆らわないこと」を美徳とするような不文律があり、ハラスメントを受けても声を上げにくく、あらがうことをあきらめるを得ない空気がありました。

パワハラ認定の3要素と判断の難しさ

厚生労働省が公開している「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」には、パワハラについて「職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの3つの要素をすべて満たすものをいいます」と説明されています。

浜松市で起こったことが第三者調査の報告書通りであれば、浜松市長の一連の言動がパワハラに該当することは明白でしょう。(1)の「優越的な関係」については比較的判断しやすいとしても、(2)の「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」や(3)「就業環境が害される」については、どの程度であれば該当するのか分かりにくい面があります。

例えば、部下が仕事でミスをした時に「ダメじゃないか!」と叱った場合です。大声を出しただけでパワハラになるわけではありません。ただし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた叱責(しっせき)であれば、パワハラに該当する可能性があります。大声でなかったとしても、部下の人柄を否定するような言動を浴びせ、日常的に何度も繰り返されていたとしたら、パワハラに該当する可能性があります。

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どこからがパワハラになるのか判断できず「叱ってもいいのだろうか」と萎縮して部下を指導できなくなってしまう上司もいます。しかし、部下のミスが人命に関わるなど、重大な事態につながる可能性がある場合や緊急性が高い場合には、大声を出してすぐにストップさせなければならないケースもあるでしょう。

ハラスメント意識に鈍感でパワハラをし続けてしまう上司も、敏感になりすぎて萎縮してしまう軟弱上司も、どちらにも共通するのは、結果として組織のパフォーマンスを損なう可能性があることです。パワハラ上司に対して部下は意見を言いづらく、報告連絡をためらいがちになります。叱責を恐れて不都合な事実を隠し、対策が遅れる原因にもなりかねません。

一方、上司がパワハラを恐れて萎縮すると、部下の業務上の不具合や問題点を指摘できず、改善されにくくなります。顧客や会社に損害を与えることになりかねません。上司がパワハラに鈍感でも敏感過ぎても、仕事上はマイナスだということです。