『ロードス島戦記』水野良が語る異世界ブームとウェブトゥーン挑戦
水野良が語る異世界ブームとウェブトゥーン挑戦

1988年に誕生した『ロードス島戦記』(著/水野良)は、日本のファンタジー文化に大きな影響を与えてきた。エルフや魔法、冒険者といった要素を広く定着させ、後の作品にも影響を与えた同作が、完全新作スピンオフ『ロードス島戦記 : 死霊の女王』をLINEマンガとebookjapanで展開している。水野良氏が、ファンタジー作品の変遷や縦読みマンガという新たな舞台への挑戦について語った。

日本ファンタジーの礎を築いた『ロードス島戦記』

『ロードス島戦記』は、剣と魔法の世界を舞台に、国家間の争いや種族の対立、壮大な歴史を描いたファンタジー作品だ。テーブルトークRPG(TRPG)をルーツに誕生し、冒険者たちの旅と成長を描く王道ファンタジーとして人気を集めてきた。1988年の刊行開始以降、アニメ化やゲーム化など幅広く展開し、シリーズ累計約1000万部を記録している。

水野氏は、1980年代後半から現在までのファンタジー作品の流れを次のように振り返る。「『ロードス島戦記』が出始めた頃は、ロールプレイングゲームにインスパイアされた異世界を舞台にしたファンタジーが主流だったと理解しています。それから『スレイヤーズ』に代表されるキャラクターの魅力をメインにしたライトファンタジーに主流が変わりました。そして投稿小説という新しいメディアの出現から、『ソードアート・オンライン』の大成功を端緒として異世界ファンタジーという新しいジャンルが席巻していったというのが、私個人の感覚です」

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近年では、「異世界転生」や「チート能力」を題材とした作品が、マンガやライトノベル市場で大きなジャンルとして定着している。水野氏は、小説家視点から「転生者を主人公とすることで現代的な感性を異世界に持ち込むことができます。作者も書きやすく、読者も受け入れやすかったのではないかと想像しています」と分析する。

時代によるファンタジーの形の変化の中で、『ロードス島戦記』が残した影響については、ユーモアを交えて「エルフの耳だと思っています。キャラクター・デザインをしていただいた出渕裕さんの功績ですが(笑)」と語った。長く尖った耳を持つエルフのビジュアルは、現在の日本ファンタジー作品で広く知られる表現となっている。

重厚な世界観を縦読みマンガへ

今回のスピンオフウェブトゥーンは、LINE Digital Frontier、REDICE STUDIO、KADOKAWAの3社が共同設立したウェブトゥーン制作スタジオ「STUDIO WHITE」の第1弾作品として制作される。長年のファンの間では、期待だけでなく戸惑いの声もある。

小説ならではの緻密な文章表現によって世界観を構築してきた『ロードス島戦記』が、テンポや視覚的なインパクトを重視するウェブトゥーンでどのように表現されるのか。水野氏は、ウェブトゥーンの魅力を「コミックとアニメの中間的なメディアであると理解しています。キャラクターの軽妙な会話やアクションが魅力なのかなと感じています」と捉える。

小説では世界全体の歴史や戦争の流れを俯瞰的に描いてきたが、ウェブトゥーンではキャラクターの表情や動き、戦闘の迫力をより直接的に届けることができる。『ロードス島戦記 : 死霊の女王』で、本編では描かれなかった「知られざる戦争」を舞台に選んだことも、ウェブトゥーンという表現との相性を意識したものだ。水野氏は制作陣への期待として「小説では“戦争”を俯瞰的に描くことが多いので、ウェブトゥーンではキャラクター視点からの“戦闘”で魅せてほしいですね」と語る。

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時代が変わっても「ロードスらしさ」は変わらない

表現媒体が変化しても、大切にしているのは作品の核となる世界観だ。水野氏は、制作陣から出されるオリジナルな提案を柔軟に取り入れつつ、「さすがに『それはロードスじゃない』という点は指摘させていただいています。魔法やモンスター、アイテムといった小道具に関してのものが多い気がします。ただ、制作側からのオリジナルな提案についても、うまくアレンジして採用するように努めています」と、原作者としての線引きを明かす。

『ロードス島戦記』が時代を超えて愛されてきた理由について、水野氏は「私の作品が王道とは思っていませんが、時代にさほど左右されないところはあったのかもしれませんね。おかげで、30年あまりファンの方々の支持を得られたのだと思っています。私個人としては、好きな架空世界の歴史と設定を箱庭のように創ってきただけなのですが」と振り返る。

作品の大きな魅力は、流行を追うのではなく、独自に構築された壮大な世界観にある。国家や種族、歴史といった設定が幾重にも積み重なった世界の中で、キャラクターたちの葛藤や冒険が描かれてきた。『ロードス島戦記 : 死霊の女王』では、その歴史の一部に新たな視点を加えながら、縦読みマンガならではの表現で新しい読者へ届けていく。

最後に、作品が受け継がれていくために大切なことについて、水野氏は「ロードスはロードスであることが、なにより大切だと思っています。時代は変化していきますが、ロードスについては変わらないことに価値がある気がします。100年後でも読み継がれているような作品であってほしいですね」と語った。