警視庁は、雇用関係のない運転手に事業用の緑ナンバーを貸し出し、無許可の「白タク行為」をさせていたなどとして、都市型ハイヤー会社「フェニックス国際」(東京都足立区)の元社長で実質的経営者の男(41)(中野区)ら中国籍の男4人を道路運送法違反(名義貸し、無許可営業)容疑で逮捕したことがわかった。
インバウンド需要目当てに約3800万円受取か
同庁は、実質的経営者の男がインバウンド(訪日外国人客)需要を目当てに2024年11月~今年5月、雇用関係のない中国人ドライバー十数人の自家用車を自社名義の緑ナンバーに変更する手口で、名義使用料として計約3800万円を受け取っていたとみている。
他に逮捕されたのは、いずれも個人運転手の男(41)(武蔵村山市)ら3人。捜査関係者によると、実質的経営者の男は2~4月、中国人ドライバー3人と雇用関係がないのに、3人が羽田空港などで客を乗せて運送事業を行うにあたり、自社名義で登録した事業用車両を使用させた疑い。3人は無許可で運行した疑い。逮捕はいずれも今月19日。
男は調べに大筋で容疑を認め、個人運転手の男は「お客さんから金をもらって運送したが、詳しくは覚えていない」と一部否認している。ほかの2人は容疑を認めているという。
都市型ハイヤーの制度悪用
都市型ハイヤーは、都市部での外国人観光客やビジネス客の増加に対応するため、14年に制度化された。既存のタクシーなどと異なり完全予約制で、「連続2時間以上運行」「流し営業はできない」といった条件がある。フェニックス社は24年2月に設立され、同9月に都市型ハイヤーの運送事業許可を得ていた。
ドライバーの3人は実質的経営者の男の知人で、男から仕事を手伝うよう勧誘されたという。警視庁は、男がドライバーの自家用車を自社の営業車として関東運輸局東京運輸支局に登録し、無許可の運行をさせていたとみている。
運転手3人は、中国語の配車アプリや中国のSNS「微信(ウィーチャット)」を通じて紹介された観光客らを相手にしており、空港で客に声をかけることもあったという。売り上げの20%を名義使用料として男に払っていたとされる。
いずれもそれぞれの自宅を拠点に運行しており、フェニックス社は運転手の飲酒や健康状態のチェックのほか、車両の安全確認といった法定の運行前点検を行っていなかった。
同庁は22日、別の中国籍の運転手の男(37)(千葉県船橋市)と、法人としてのフェニックス社を道路運送法違反(無許可営業、名義貸し)容疑で東京地検に書類送検する方針。昨年8月に「羽田空港でハイヤー運転手が違法な客引きをしている」との情報が寄せられ、捜査していた。
インバウンド需要目当てに急増する白タク
コロナ禍以降のインバウンド需要の回復に伴い、国に無許可で客を乗せるタクシー「白タク」が急増した。警察庁によると、昨年摘発された白タク行為は過去10年間で最多の132件(前年比52件増)に上った。
捜査関係者によると、都市型ハイヤーの白タクが目立ち始めたのは数年前から。業者は運転手から名義使用料を受け取れ、運転手側も緑ナンバーで運行するため不正が発覚しにくい。「ウィンウィンの関係」(捜査幹部)にあるという。
都市圏のタクシーや一般のハイヤーは供給過多を防ぐため新規参入が規制されているが、都市型ハイヤーは対象外で、2024年度の事業者数は5年前の約2倍の610社になった。
旅客運行事業に詳しい名古屋大の加藤博和教授(公共交通政策)は「都市型ハイヤーの事業許可や事業用車両の台数を増やす際の要件を厳格化すべきだ。指導・監督する運輸局・支局は人員が足りず、対策が後手に回っている。体制強化も求められる」としている。



