警視庁は22日、再生可能エネルギー関連会社「新電源」(福島市佐原)の元代表取締役(60)ら男3人を詐欺容疑で逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。既に売却済みの風力発電事業の譲渡を持ちかけ、東京都内の2社から計2億円を詐取したという。
逮捕された3人と手口
他に逮捕されたのは、いずれも新電源の事業に関わっていた自営業の男(72)、会社員の男(37)。3人は共謀して2022年5月頃、新電源が既に売却した北海道石狩市と当別町の2か所の風力発電事業について、架空の事業譲渡の手付金名目で、いずれも港区の再エネ関連会社2社から計2億円を詐取した疑い。
17年3月に設立された新電源は、石狩市と当別町で風力発電事業の用地取得などを進めたが、19年12月に用地を含めて2か所の事業を千代田区の再エネ関連会社に譲渡した。
譲渡後の経緯
21年9月に代表取締役に就いた男から指示を受けた自営業の男が、22年4月に旧知の港区の再エネ関連会社に2か所の事業譲渡を持ちかけ、翌月には自営業の男、会社員の男が事業計画地に案内した。その後、共同事業者として港区の別の再エネ関連会社が加わり、元代表取締役はこの2社と総額約50億円での事業譲渡に合意。手付金として1億円ずつ計2億円を新電源名義の口座に振り込ませた。
元代表取締役が経営に関与する茨城県つくば市の農業生産法人が、実際の譲渡先から渉外業務を委託されていたため、同庁は、譲渡後も事業計画地に立ち入ることが可能だったとみている。つくば市の法人は、他社と共同出資した会社を通じて営農型太陽光発電所を運営している。
被害発覚と金の流れ
事業譲渡の合意翌月の22年6月、港区の再エネ関連会社の1社が実際の譲渡先から指摘を受けて詐欺被害に気付いた。元代表取締役は23年6月、新電源の取締役を辞任した。元代表取締役は、2億円が振り込まれた直後、全額を3人が管理する口座などに移していた。同庁は元代表取締役が詐取金をクルーザー2台(計約6000万円)の購入費などに充てたとみて、詳しい経緯を調べている。
現代表の説明
新電源の現代表取締役の男性は22日、読売新聞の取材に対し、「元代表取締役に『会社を整理したいから』と頼まれ、3年前に形だけの代表に就任したが、法人の実印も渡されておらず、名義を貸しただけ」と説明し、「私は事件には一切関わっておらず、北海道の風力発電事業のことも含め、何が起きていたかは知らない」とした。
再生可能エネルギーを巡る背景
風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、電力会社が一定価格で電力を買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」が始まった2012年以降、国内で導入が広がった。一般社団法人「日本風力発電協会」によると、風力発電の累積導入量は昨年末時点で発電出力6434メガ・ワットに上り、12年から約2・5倍に増えている。FITは制度開始当初に認定を取得すれば、20年間にわたって高値での売電が見込めたため、投資目的での参入が相次ぎ、発電せずに売電権が売却されるケースも目立った。国民生活センターによると、再エネを巡っては今も「配当が得られる」などと、実態が不透明な投資契約を持ちかける事例が後を絶たないという。



