東京都健康長寿医療センターの研究チームは、同居家族がいるにもかかわらず家庭内で孤立する「家庭内孤立」の実態を明らかにした。調査によると、家庭内孤立状態にある人は、ひとり暮らしの人よりも主観的健康感が低く、うつ状態や孤独感が強いなど、精神的健康が不良であることが分かった。
調査の概要と定義
調査は2023年、埼玉県和光市に住む40歳以上を対象に実施された「和光コホート研究」の郵送調査データをもとに行われた。分析対象は40〜64歳の2395人と65歳以上の6429人、計8824人。研究チームは「家庭内孤立」を、同居家族がいるにもかかわらず、平日・週末ともに家族との会話が1日15分未満で、かつ家の中で一人で過ごす時間が長い状態と定義した。
家庭内孤立の割合と傾向
分析の結果、「家庭内孤立あり」は対象者全体の4.7%、同居者がいる人に絞ると5.8%が該当した。年代が上がるほど割合は増加し、女性より男性に多い傾向が浮かび上がった。特に高齢男性で顕著であり、家族と同居していても会話が少なく、孤立感を抱えやすい実態が示された。
精神的健康への影響
衝撃的なのは、家庭内孤立の人はひとり暮らしの人よりも主観的健康感が低く、うつ状態や孤独感が強いなど、精神的健康が不良だった点だ。東京都健康長寿医療センターの村山洋史研究部長は「人は本来手に入るはずのものが得られない状況の方が強いストレスを感じる」と説明する。同居家族がいるのに会話や交流が得られないことが、かえって孤独感を増幅させている可能性がある。
家庭内孤立が生まれる背景
家庭内孤立が生まれる背景として、家族間のコミュニケーション不足やライフスタイルの変化が考えられる。特に男性は仕事中心の生活から退職後に家庭内での役割や会話が減少しやすい。また、スマートフォンやテレビなどのメディアに没頭する時間が増え、家族との会話が減っていることも一因とみられる。
今後の課題と対策
研究チームは、家庭内孤立を早期に発見し、介入する仕組みが必要だと指摘する。特に高齢男性は地域の集まりに参加しにくい傾向があり、家庭内での孤立が深刻化しやすい。自治体や地域コミュニティが、家族単位での交流促進や相談窓口の充実を図ることが求められる。



