「命が助かったんだから」と言われた人も…体の一部失った心に寄り添う人工ボディパーツの舞台裏
「命が助かったんだから」胸を失った心に寄り添う人工ボディパーツの舞台裏

体の一部を失った人々の心に寄り添う「エピテーゼ」の製作に取り組む田村さん。外見が整うことで心の回復や社会復帰のきっかけになることを実感し、一人ひとりの悩みに耳を傾け、時には別の解決策を提案することもある。

エピテーゼとの出会い

田村さんは、海外で元兵士とみられる人物の顔にエピテーゼを製作する工程を目撃した。その人物は片側の目・耳・頬の一部がなく、完成したエピテーゼを手鏡で確認した際には驚きを隠せない様子で、家族と抱き合い涙を流して喜んだという。この経験から、外見が整うことで心の回復や社会に戻るきっかけになると実感した。

帰国後、田村さんは歯科技工士として働きながらエピテーゼの技術を習得。2017年に個人事業主として開業し、現在は東京でエピテーゼ専門サロンを運営している。

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一人ひとりの思いに向き合う

エピテーゼ製作を仕事とする田村さんだが、対応できるのは月に4人ほど。一人ひとりの思いに向き合い、エピテーゼを通じて悩みを解消することを重視している。初回の相談には2時間ほどかけ、自然な会話の中で思いや本音を聞いていく。

「体の一部を失った方が抱える悩みや、外見の違いに関する悩みは、気軽に相談できるものではありません。そもそも、こうした悩みをどこに相談すればいいのかわからない方も多いんです。それに、多くの場合は痛みもなく、日常生活を送るうえでは不便がない。すると病院に行っても解決することができません。相談に来た方の中には、これまで誰にも話せなかった思いを初めて口にし、涙を流される方もいます」

エピテーゼを作らない提案も

田村さんはすべての悩みをエピテーゼで解決しようとしているわけではない。その人の悩みにじっくりと耳を傾け、何に困っているのかを探っていく。場合によっては、別の解決法を提案することもある。

例えば、乳がんで全摘後にバストエピテーゼを希望した方には、服を着たときにきれいなラインを出したいという要望を聞き、エピテーゼではなくオーダーメイドの補正下着屋さんを紹介した。また、小耳症のお子様の相談では、耳エピテーゼの製作を希望していたが、実際に困っていたのは「眼鏡をかけられないこと」だったため、耳にかけない眼鏡を扱うお店を紹介した。別の小耳症のケースでは、親御さんがエピテーゼを希望したが、お子様自身はそれほど不便を感じておらず、親御さんの悩みに対して同じ疾患の家族会を紹介したこともある。

田村さんは、ライフスタイルや使用する場面に合わせて細かくデザインすることを心がけている。

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