香川大学医学部小児科学講座の近藤健夫助教(消化器・肝臓分野)らの研究グループは、難治性再発性CD(クロストリディオイデス・ディフィシル)腸炎を発症した3歳の女児に対し、父親の糞便を腸内に移植する治療に成功した。移植から1年が経過しても、再発や合併症は見られなかった。
治療の経緯
この女児は超低出生体重児として出生し、生後しばらく集中治療を受けた。退院後も心臓や肺に合併症があり、悪化で緊急入院となった。病棟で治療中に腹痛や下痢がみられ、細菌検査の結果、CD腸炎と判明した。
CD腸炎に対してガイドラインに沿って抗菌薬を投与したが、治療を中止すると再発を繰り返し、完治しにくい状態だった。
糞便移植の実施
近藤助教は、難治性となった原因について「出生後の抗菌薬使用に加え、超低出生体重児で心肺に合併症があったため長期間経鼻栄養を摂っていたことが、腸内細菌の多様性低下を招いた可能性がある」と分析する。
健康状態が良好だった実父から便を採取し、生理食塩水で溶かして液体状にし、滅菌ガーゼでろ過して150ccに調整。大腸内視鏡を用いて女児の大腸内に移植した。移植後は腸内の細菌環境が整い、1年後も再発や合併症は見られなかった。
今後の展望
この手法は2025年9月と26年4月の小児科関連の2学会で報告され、他の小児科医から「同じような患者がいて治療法がなく困っている。具体的な移植方法を教えてほしい」といった声が寄せられた。
近藤助教は「香川大学医学部附属病院でも年に2、3例はCD腸炎の発症例がある。難治な経過をたどる場合、糞便移植が選択肢に上がる。倫理的観点から現状ではどの医療機関でも実施できるわけではないが、症例を増やして完治できるよう治療法を確立したい」と話している。



