健康診断の結果を受け取っても、「毎年のことだから」とそのまましまい込んでいないだろうか。厚生労働省の令和6年「国民健康・栄養調査」によると、20~60歳代男性の肥満者(BMI25以上)は34.0%、40~60歳代女性でも20.2%に上る。ただし、健診票に「肥満」と記載されているだけで、すぐに病気が確定するわけではない。重要なのは、体重だけでなく、血糖・血圧・脂質など、体に負担がかかり始めていないかを確認することだ。
肥満と肥満症の違いを理解する
日本の基準では、BMIが25以上の場合、医学的に「肥満」に分類される。しかし、肥満そのものが直ちに病気を意味するわけではない。肥満が原因で血糖、血圧、脂質、肝機能、睡眠時無呼吸、関節の痛みなどの健康障害が生じている場合、医師の診断によって「肥満症」として治療の対象となる。厳密には内臓脂肪の評価なども診断に関わるが、一般の読者にとって大切なのは「体重だけで自分を責めること」ではなく、「体に負担が出始めていないかを早めに見つけること」だ。最終的な診断は医師が行うが、受診を考えるきっかけは健診票の中にある。
サイン1:「要精査」「要医療」が付いている
最初に見てほしいのは、健診結果の判定欄だ。血糖、血圧、中性脂肪、LDLコレステロール、肝機能、尿酸などに「要精査」「要医療」「要受診」といった判定が付いている場合は、体重の問題だけでなく、体内で負担が進んでいる可能性がある。ここで避けたいのは、「少し高いだけ」「毎年同じだから」と自己判断で閉じてしまうことだ。健診は病名を確定する場ではないが、相談のきっかけとしては十分である。
サイン2:BMIだけでなく、血糖・血圧・脂質も一緒に悪くなっている
BMIの数字だけを見て一喜一憂する必要はない。むしろ大切なのは、血糖やHbA1c、血圧、中性脂肪、LDLコレステロール、肝機能などが一緒に動いていないかだ。例えば、体重が少し増えた時期に血糖や血圧も上がっているなら、体が「今の生活が少しきつくなってきた」と知らせているサインかもしれない。数字の細かい判定は医師に任せて構わない。自分で診断しようとせず、健診結果を持って相談することが大切だ。
サイン3:去年より悪くなっている
健診票は、1年分だけで見るより、数年分を並べると見え方が変わる。去年より体重が増えた、HbA1cが少し上がった、血圧がじわじわ高くなっている。こうした小さな変化は、将来の病気を防ぐための早い合図だ。受診時には、できれば過去3~5年分の健診結果を持参できると安心だ。どの数字がいつから変わったかが分かると、生活習慣の見直しや治療方針を考えやすくなる。
何科に行けばいい?受診の際の準備と本人への声かけ方
相談先としては、かかりつけ医、糖尿病内分泌内科、循環器内科、肥満症外来などが考えられる。近くに専門外来がない場合でも、まずはかかりつけ医に「健診結果で肥満と血糖・血圧が気になるので相談したい」と伝えるだけで十分だ。迷ったら、まず「健診結果を見てほしい」と伝えよう。受診前に用意しておくとよいのは、過去3~5年分の健診結果、体重の変化のメモ、これまで試した食事・運動・ダイエットの内容だ。うまくいかなかった経験も、治療方針を考えるための大事な情報になる。
自分自身ではなく家族の場合、どう声をかけて受診を勧めればいいのか迷うこともあるだろう。その場合、「痩せなよ」ではなく、「健診結果、一緒に見てみる?」「心配だから、相談だけでも行ってみない?」などの方が、受診の入口になりやすい。責める言葉は、本人を前に進ませるより、相談しづらくしてしまうことがある。
健診票は、体からの“早めのメッセージ”
健診票を開いた時点で、改善に向けすでに一歩進んでいる。大切なのは、数字を見て自分を責めることではなく、将来の病気を防ぐために、今できる相談につなげることだ。健診票は、叱られるための紙ではなく、体が出してくれた早めのメッセージである。封筒にしまう前に、一度立ち止まって数値を見直してみてはいかがだろうか。
糖尿病専門医・指導医の三浦正樹先生(亀田総合病院 糖尿病・内分泌内科 部長)は、「体重だけで一喜一憂するのではなく、血糖や血圧など他の数値と合わせて見ることが重要」と指摘する。三浦先生は順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院で代謝内分泌内科学を修了。日本糖尿病学会専門医・指導医として、肥満症診療や生活習慣病診療に取り組んでいる。



