作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏(66歳)は、定年後の幸福度を高めるには、信頼できる人間関係を絞ることが重要だと指摘している。広く浅い付き合いよりも、少数の深い関係のほうが精神的や経済的な安定につながるという。
「本当に好きなこと」以外は切り捨てる
定年後の人生を豊かで健康に過ごすためには、行動範囲や人間関係をあえて限定すべきだと佐藤氏は述べる。心身の健康維持や経済的な安定、精神的な余裕を確保するためだ。現役時代の広すぎる人間関係は、定年後に負担となることが多い。
精神科医の保坂隆氏は「信頼できる人間関係を9人程度に絞る」ことを提言している。浅い人間関係を数多く持つよりも、密度の濃い人間関係を維持するほうが精神的に安定するからだ。孤独な老後を避けるには、心から楽しめる共通の趣味を持つ少数の仲間や、緩くつながれる地域活動など、質の高い人間関係に絞るほうが有効である。
定年後、無限に時間があるわけではない。本当に楽しいと思える活動に時間や費用を集中すれば、満足度の高い生活が送れる。加えて、義理の付き合いや気乗りしない活動を減らせば、経済的な不安も軽減できる。定年後にすべきは「本当に好きなこと」だけであり、それ以外は切り捨てていくのが有意義な老後を送るための基礎だと佐藤氏は説く。
コロナ禍のひとり時間が価値観を変えた
コロナ禍も、定年後の人たちの生活や意識に大きな変容をもたらし、マインドの「リセット」をもたらした。特に「健康・安全」「人間関係」「働き方」「日常の幸福」に関する新たな価値観を明確にした。
具体的な価値観の変化として、まず健康や安全を最優先し、行動がローカライズ化した。感染リスクを避けつつ健康を維持するため、「ウォーキング」「ジョギング」「ガーデニング」「懸賞応募」などが新たな趣味として定着。すなわち「近場」「一人」「屋外」「黙考」の安全な楽しさを知ったことになる。遠出や人混みを避け、自宅やその周辺で安全に過ごすことが重視されるようになった。
また、リアルな人間関係の再構築も進んだ。対面でのコミュニケーションが減少し、人間関係が疎遠になるなか、本当に必要なつながりとは何かを再発見する機会となった。「密から疎への転換」である。一人で過ごす時間が増えるなか、孤独感と向き合いながら、デジタル技術などを活用して孤立を避ける方法が模索された。
本稿は、佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる〈実践・成功編〉』(Hanada新書)の一部を再編集したもの。



