アメリカがイランを攻撃してから約5カ月。両国は6月18日に戦闘終結へ向けた覚書に署名し、停戦にこぎ着けた。しかし、最終合意に向けた最大60日間の交渉は決裂。トランプ大統領は7月8日、停戦は「終わった」と発言し、緊張が続いている。
長期化の原因はイラン国内の権力構造
戦闘開始当初、トランプ大統領は4~5週間で終わると語っていたが、なぜ泥沼化したのか。第1次トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏は、停戦合意破綻の主因について「イラン側の交渉者たち、つまり文民政府の上層部が、イスラム革命防衛隊(IRGC)に対して実質的な権限を持っていないことだ」と指摘する。IRGCはホルムズ海峡を管轄する海軍など主要な軍事戦力を掌握している。3~4月のアメリカの攻撃により、イランでは政府機能の多くが破壊され、外相などの文民指導者にはIRGCを統制する力がなかったという。
覚書はイランに有利な内容
覚書はホルムズ海峡の開放やイランの核兵器製造放棄など14項目から成るが、ボルトン氏は「イランにとって非常に有利な内容だ」と分析する。例えば、ホルムズ海峡は「国際海峡」とされるべきだが、覚書はイランの支配を追認しているように見えるという。トランプ大統領が覚書をたたき台に交渉した最大の理由は、11月の中間選挙を控え、アメリカ内のガソリン価格高騰を案じていたからだ。覚書に基づき、イラン産原油の禁輸制裁を一時的に免除することでイランや湾岸諸国からの原油輸出が増え、世界の原油価格が下がり、アメリカの消費者価格も低下すると考えた。しかし結果的に、それがイランに「息をつく余裕」を与えてしまった。原油輸出の一時再開でイランは数十億ドルの収益を得られる立場にあったからだ。さらに核兵器開発問題でも、覚書で製造放棄が定められながらも交渉が先送りされ、疑惑への制裁が科されないまま時間が経過。これもイランにとって「勝利」だとボルトン氏は言う。
イランの心理戦と今後の展望
ボルトン氏は、イランがトランプ大統領に心理戦を仕掛けていると指摘。MAGA派(トランプ支持派)も分裂していると述べ、今後の展開について慎重な見方を示している。



