イランに「息をつく余裕」を与えてしまった
アメリカが2月末にイランを攻撃してから約5カ月。両国は6月18日、戦闘終結に向けた覚書に署名。停戦にこぎ着け、最終合意に向けて最長60日間の交渉を進めていたが、決裂した。トランプ大統領は7月8日、停戦は「終わった」と発言するなど緊張は続いている。
戦闘が始まった当初、トランプ大統領は4~5週間で終わると語っていたが、なぜ泥沼化したのか。第1次トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務め、イスラム革命防衛隊(IRGC)から命を狙われたこともある対イラン強硬派のジョン・ボルトン氏に話を聞いた。
戦闘終結をめぐる覚書が破綻した理由について、ボルトン氏は「主因は、イラン側の交渉者たち、つまり文民政府の上層部が、IRGCに対して実質的な権限を持っていないことだ」と指摘。IRGCはホルムズ海峡を管轄する海軍など主要な軍事戦力を掌握している。3~4月の米軍攻撃によりイランでは政府機能の多くが破壊され、外相などの文民指導者にはIRGCを統制する力がないという。
イランに有利な覚書の内容
覚書はホルムズ海峡の開放やイランの核兵器製造放棄など14項目から成るが、イランに有利とされる。ボルトン氏は「イランにとって非常に有利な内容だ。ホルムズ海峡は『国際海峡』だが、覚書はイランの支配を追認しているように見える」と語る。
トランプ大統領が覚書を交渉のたたき台にした最大の理由は、11月の中間選挙を控え、米国内のガソリン価格高騰を案じていたからだ。覚書に基づき、イラン産原油の禁輸制裁を一時的に免除することで、イランと湾岸諸国から原油輸出を増やし、世界の原油価格と米消費者価格を下げる狙いがあった。しかし結果的に、それがイランに「息をつく余裕」を与えた。原油輸出の一時再開でイランは数十億ドルの収益を得られる立場にあった。
核兵器開発問題についても、覚書では核兵器製造放棄が定められているものの、交渉が先送りされ、核兵器製造疑惑への制裁が科されないまま時間が過ぎた。ボルトン氏は「これはイランにとって『勝利』を意味する」と述べている。



