プライベート・エクイティ(PE)ファームによる生命保険会社の買収が急速に進んでいる。保険料という安定したキャッシュフローを原資に、高リスクな融資を拡大する「錬金術」が、次の金融危機を招くとの指摘が出ている。
PEファンドが保険業界を席巻
ブラックストーン、アポロ、KKRといった巨大PEは、監視が最も緩い領域でかつての投資銀行を遥かに凌ぐ規模へと成長した。現在、ブラックストーンの運用資産残高は7310億ドル(約110兆円)に達し、ウォール街で最も人気のある就職先はゴールドマン・サックスからこれらの巨大PEへとシフトしている。
PEファームは近年、生命保険会社の買収に総額400億ドル(約6兆円)を投じている。カーライルによる再保険会社フォーティテュードの買収、ブラックストーンによるオールステート生命保険の買収、KKRによるグローバル・アトランティックの買収、アポロによるアテネの買収などが代表例だ。現在、アメリカの保険業界の総資産の7%以上、約3760億ドルがPEファームの支配下にある。
保険料が高リスク融資の原資に
PEが保険会社を欲しがる理由は、保険が市民から毎月確実に保険料を集められるため、極めて安定した巨大なキャッシュフローを提供してくれるからだ。PEファームは、預かった保険資金を自らのLBO(レバレッジド・バイアウト)買収や、ハイリスクなプライベート・クレジット(中堅企業向けの直接融資)の原資として流用している。
さらに、買収した保険会社やその顧客に対し、自らのファンドの「管理報酬」や「仲介手数料」を二重三重に請求し、巨額の利益を抜き取っているという。民間保険会社のCEOは、「(PEによる買収は)保険契約者にとって良いことは何一つありません」と警告している。
規制の抜け穴がリスクを増幅
PEファンドはバミューダなどの規制の緩い地域を活用し、保険会社の準備金を限界まで削る手法を取る。これにより、リスクに対する備えが薄くなり、金融危機が発生した際の影響が大きくなる可能性がある。
保険業界の資産の7%以上がPEの支配下にある現状は、金融システム全体の安定性に対する懸念を強めている。プライベート・クレジット市場の拡大と相まって、リーマンショックを超える「次の金融危機」の主役になる可能性が指摘されている。



