AI(人工知能)ブームに沸くアメリカで、税制の見直しが重要な論点として浮上している。現在の税制では、AIの急速な普及に耐えられない可能性があるからだ。カギを握るのは、AIが雇用に与える影響である。仮に大量の雇用がAIに置き換えられるようだと、米国財政には歳出拡大と歳入減少の圧力が同時にかかりかねない。
雇用喪失が財政に及ぼす二重の圧力
歳出面では、雇用減少への政策対応が必要になる。生活保護など通常の失業対策が膨らむだけでなく、リスキリングのための職業訓練など、AI時代の雇用変化に対応する施策の拡充が求められる。大量失業に備え、一律給付で国民の所得を支える「ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)」を提案する向きもある。
しかし、こうした施策を支える財源は心もとない。雇用とともに所得が失われると、個人所得税が集めにくくなるからだ。個人所得税は米国政府の最大の財源であり、2025年度の実績では税収の半分強を占める。歳出に拡大圧力がかかるうえに個人所得税が揺らげば、新しい財源の議論は避けられない。
AI時代の新たな税制構想:税による再分配か資本共有か
AIに関する新たな税制の構想は、大きく2つに分けられる。一つは、AIによる生産性向上で得られた利益に課税し、それを再分配に充てるという「税による再分配」のアプローチだ。もう一つは、AIの資本そのものを国民が共有する「資本共有」の考え方で、例えばAI企業の株式を国民に分配するなどの方法が検討されている。
これらの構想はまだ初期段階だが、ワシントンでは専門家や政策担当者の間で議論が活発化している。みずほ総合研究所の安井明彦シニアプリンシパルは「AIが生み出す経済的果実を誰が受け取るのかという根本的な問いに対し、税制改革が一つの答えを提供する可能性がある」と指摘する。
今後の展望と課題
AI税制の実現には、技術の進展スピードや雇用への影響度合いを見極める必要がある。また、国際的な税制調和や企業の反発も課題となる。しかし、AIの普及が加速する中で、米国が新たな分配モデルを構築する動きは、世界の税制や経済政策にも影響を与える可能性が高い。



