納得できるキャリア選択の鍵となるのは、単に給与テーブルを公開することではなく、将来の報酬見通しの「透明性」を見極められるかにある。特に30~40代を中心に「自分の将来の給与がどうなるのかわからない」という不安が広がる中、給与水準そのものよりも「3年先の見通し」と「報酬の透明性」を軸にキャリアを考える視点が重要だ。
「いずれ報われる」という前提の揺らぎ
入社から10年、20年が経ち、目の前の仕事を積み重ねて組織に求められる役割を果たしてきた。その先に、やりがいある仕事や成長機会、納得のいく評価や昇給があるはずだと信じて、多くの人がキャリアを築いてきた。こうした前提は、言葉にされることは少ないが、企業と従業員との間で受け継がれてきた。
賃金だけでなく評価や成長機会なども含めて、「将来どのように報われるのか」について企業と従業員の間で暗黙に共有されてきた期待関係を、組織行動論では「心理的契約」と呼ぶ。これは雇用契約のように明文化されたものではなく、「これだけ貢献すれば、将来こう報われるはずだ」という暗黙の期待まで含む概念だ。この契約が守られていると感じられると、仕事への満足度や意欲は高まる。
報酬の透明性がもたらす「納得性」
本連載では、給与水準そのものよりも「3年先の見通し」と「報酬の透明性」を軸にキャリアを考える視点を示している。特に生活に直結する「未来の手取り」を起点にすることで、働き方をより具体的に考えやすくなる。
第2回では、納得できるキャリア選択のカギとなるのが将来の報酬見通しの「透明性」であることを解説する。処遇の透明性は、単に給与テーブルを公開することではなく、評価や成長機会を含む総合的な報酬の見通しを明確にすることにある。
今後の配信予定
第3回では、給与だけでは測れない自社の「総合報酬(トータルリワード)」をABCDE枠組みで把握する方法を解説する。第4回では、統合報告書・人的資本レポートなど開示情報が「将来の給与」を読み解くための宝の山であることを示す。第5回では、「もう辞めたい」の衝動に流される前に、キャリアは3年先を起点に逆算して考える重要性を説く。



