岩澤侑生子が語る台湾演劇の熱量と日台協働の課題
岩澤侑生子が語る台湾演劇の熱量と日台協働の課題

俳優の岩澤侑生子氏は、台湾の演劇環境について、日本の植民地であった歴史を認識させる点や、国立大学に演劇学科が複数あることなど、日本との大きな違いを指摘する。2026年2月に日本で行った絵本のリーディング公演の経験も踏まえ、日台の演劇協働の可能性と課題を語った。

台湾の演劇教育の特徴

岩澤氏によると、台湾には台湾大学や台北芸術大学をはじめ、複数の国立大学に演劇系の学科があり、学生同士の縦と横のつながりが生まれやすい。先輩後輩の関係が構築され、共通のメソッドや言語を共有できる環境があるという。

一方、日本では私立大学の演劇学科や劇場運営の研修機関は存在するが、国公立大学で演劇を学べる場は限られていた。近年、兵庫県立の芸術文化観光専門職大学が設立され、舞台芸術を学ぶ環境は変わりつつあるが、台湾とは状況が異なると岩澤氏は述べる。

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歴史の違いが創作環境に与える影響

日本では劇団や「何々組」のような現場単位の力が強く、近代演劇・現代演劇の歴史も台湾より長い。台湾では戒厳令解除後の1980年代後半から、小劇場や実験的な演劇が徐々に発展してきた。この歴史の違いが創作環境に表れていると岩澤氏は分析する。

日台協働に必要な歴史への視線

伝統演劇の分野では、能や狂言と台湾の伝統演劇を組み合わせる企画や、日本の人形劇と台湾の布袋戯を結ぶ試みなど、すでに交流が進んでいる。しかし、現代演劇の協働には難しさがある。特に歴史を扱う場合、日本側に加害の視点が十分にあるかどうかが問われると岩澤氏は指摘する。

近年、日本でも戦争や植民地支配について、被害だけでなく加害を描く意識が芽生えている。若い作り手の間では植民地主義をテーマにする人も増えているが、物語中心のストレートプレイでは歴史への視点が甘いと感じることもあるという。

台湾で日本統治時代や戦争を扱うなら、日本側の創作者は台湾の観客が何を受け止め、何に違和感を持つのかを慎重に考える必要があると岩澤氏は強調する。

絵本リーディング公演の経験

研修の一環として、岩澤氏は新竹の陽明交通大学が制作した絵本の日本語版翻訳とリーディング公演に取り組んだ。この絵本は旧日本海軍燃料工廠を舞台にしており、QRコードを通じて日本語、台湾語、マレー語、英語など複数の言語で読める。公演ではOHP投影機を使い、音響効果やオブジェクトシアターの要素も取り入れた。

会場には家族連れが多く訪れ、大きな煙突に住むコウモリの観察や解説の後に物語が上演された。実際の場所で上演することの力を強く感じたという。その場所はかつて日本海軍の燃料工廠として多くの工員や軍関係者が働き、戦後は国民党の人々が暮らす眷村にもなった。歴史の痕跡が今も残っている。

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