若手が本音を話す「たった一つの問い」とは?退職理由より重要
若手が本音を話す「たった一つの問い」とは?

若手社員の本音を引き出すには、従来の「なぜ辞めたのか」ではなく、「なぜ辞めないのか」という問いが有効だ。リクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗氏は、著書『あの若手はどうして辞めないのか』(朝日新書)で、この逆転の発想を提唱している。

退職理由に潜む二つのバイアス

転職経験者の多くは、退職時に必ずと言っていいほど「なぜ辞めたのか」を問われる。リクルートワークス研究所の「若手社会人の在職理由定量調査」によると、退職経験者の75.6%が辞めた会社の人事担当者や上司に退職理由を伝えている(「すべて伝えた」と「一部伝えた」の合計)。しかし、その理由には二つのバイアスがかかっていると古屋氏は指摘する。

一つ目は、退職が妥当な選択であることを訴え、スムーズに辞めるために具体的な不満(人間関係、制度、待遇など)を挙げる傾向。二つ目は、後を濁したくない心理から、「やりたいことが見つかった」「家族の事情」など、会社に責任がない理由を挙げる傾向だ。これらにより、複数の小さな違和感が積み重なった複合的な理由が、「一身上の都合」という単純な因果関係にすり替えられてしまう。

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「辞めた理由」ばかり聞く現状

古屋氏は、多くの企業が退職理由のヒアリングに力を注ぐ一方で、「在職の理由」「なぜ辞めていないのか」をほとんど尋ねていないと指摘する。退職理由は待遇や上司との相性など分かりやすく、対策にも直結しやすいため、組織はそこに資源を投入しがちだ。しかし、それでは若手の本当の声を拾えていないという。

「辞めた理由」を聞くことは、すでに去った人材の後悔を防ぐには役立つが、現在在籍する若手の満足度や定着要因を理解するには不十分だ。むしろ、なぜ今の職場に留まっているのかを聞くことで、ポジティブな動機や見落とされがちな価値観が浮かび上がる。

「辞めない理由」を聞く効果

古屋氏の研究では、若手に「なぜ辞めないのか」と尋ねると、予想外の本音が引き出されるケースが多いという。例えば、「仕事内容が面白い」「成長実感がある」「同僚との関係が良い」といったポジティブな理由だけでなく、「転職活動が面倒」「今の給与で十分」といった消極的な理由も含め、多様な回答が得られる。

この問いは、若手が自分自身の価値観を整理するきっかけにもなる。退職理由のようにネガティブな事象に焦点を当てるのではなく、ポジティブな定着要因を探ることで、組織の強みを再発見できるのだ。

ポジティブな理由こそオープンに

古屋氏は、ポジティブな理由は退職理由に比べてオープンにされにくいと指摘する。そのため、組織は意図的に「辞めない理由」を聞く場を設ける必要がある。例えば、定期的な1on1ミーティングや社内アンケートで、「今の職場で働き続ける理由は何ですか?」と尋ねることで、若手の本音を引き出せる。

実際、古屋氏が調査でこの問いを投げかけたところ、若手からは「人間関係の良さ」「裁量権の大きさ」「福利厚生の充実」など、さまざまな理由が挙がった。これらの情報は、離職防止策を考える上で貴重なデータとなる。

今の職場で働き続ける理由の多様性

若手が「辞めない理由」は、必ずしも待遇やキャリアだけではない。ライフスタイルとの適合、職場の雰囲気、仕事のやりがいなど、多岐にわたる。古屋氏は、こうした多様な理由を把握することで、組織は個々の社員に合わせた定着策を打ち出せると説く。

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「辞めた理由」だけに注目するのではなく、「辞めない理由」に耳を傾けること。それが、若手の本音を聞き出し、組織の持続的な成長につながる第一歩なのだ。