AIで生まれた時間の自然消滅を防ぐ新たな価値を生む2つのアプローチ
AIで生まれた時間の自然消滅を防ぐ新たな価値を生む2つのアプローチ

AIによって生み出された時間が、組織の成果向上に結びついていない現実がある。マッキンゼー・アンド・カンパニーの2025年調査によれば、少なくとも1業務でAIを定期的に利用している企業は88%に達する一方、利益にインパクトが出ていると感じる企業は39%にとどまる。さらに、利益に5%以上のインパクトがあった企業はわずか6%だ。ボストン・コンサルティング・グループの調査でも、AIで個人の生産性は向上するものの、組織レベルの成果に反映されるのは一部にすぎないと指摘されている。

浮いた時間は自然と消える

現状、AIで効率化できたとしても、成果の総量は変化していない。この問題はAIによって初めて現れたわけではない。「仕事は、それに当てられた時間を満たすまで膨張する」というパーキンソンの法則が示す通り、空いた時間は他の業務や無駄に吸収されやすい。リンクアンドモチベーションのプロダクトマネジャーである藤田理孝氏は、「AIで生み出された時間を新たな価値に変えるには、業務プロセスの組み替えが必要だ」と指摘する。

組織成果を高める戦略的な時間活用

効率化と成果のギャップを埋めるには、管理職の能動的な働きかけが成果を左右する。藤田氏は、管理職の役割が「判断する人」から「判断基準を作る人」へと移ると述べている。これに沿って行動を変えることで、成果は高まる可能性がある。具体的には、AIによって浮いた時間を、新たな価値を生む活動に振り向ける「2つのアプローチ」が有効だ。

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アプローチ1:業務プロセスの再設計

第一のアプローチは、業務プロセス自体を再設計することである。AIで効率化された部分を単に時間短縮として終わらせず、その時間を活用してより高度な業務や創造的な仕事に振り向ける。例えば、定型的な報告書作成をAIに任せ、管理職はその分析や戦略立案に集中する。藤田氏は「浮いた時間を自然消滅させないためには、組織として意図的に時間を再配分する仕組みが必要」と強調する。

アプローチ2:判断基準の言語化と共有

第二のアプローチは、判断基準を言語化し組織全体で共有することである。AIが多くの判断を代行するようになると、人間の役割は例外ケースの判断やルールの策定に絞られる。そのため、管理職はこれまでの経験や暗黙知を形式知化し、判断のルールブックを作成する必要がある。藤田氏は「管理職の仕事の6割が消える可能性があるが、残るのは判断基準を作る仕事だ」と述べる。

現場のリアルな変化と対応策

本連載では、AIによる現場のリアルな変化と対応策を描いている。前回の記事では、管理職の役割が「判断する人」から「判断基準を作る人」へ移行することを示した。しかし、役割に沿って行動を変えるだけでは成果は自動的に向上しない。組織全体として、AIで生まれた時間を戦略的に活用するマネジメントが求められる。

藤田氏は「AI導入の成功は、技術ではなくマネジメントの質に依存する」と指摘する。企業がAI投資の効果を最大化するためには、単なるツール導入ではなく、業務プロセスとマネジメントの再設計が不可欠だ。

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