電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品の調達構造が大きく変化している。従来のエンジンやトランスミッションなどの部品需要が減少する一方、モーターやバッテリー、インバーターなど電動化に対応した部品への需要が急増。この変化に対応できないサプライヤーは、経営の存続すら危ぶまれる事態に直面している。
部品点数の減少と調達構造の変化
EVはエンジン車に比べ、部品点数が約3分の1に減少すると言われる。例えば、エンジン車で必要な燃料タンク、排気系部品、点火プラグなどが不要になる。一方で、バッテリーセルやモーター、パワーコントロールユニットなど、新たな部品が必要となる。このため、従来の部品サプライヤーは、既存の受注減少に加え、新たな技術への投資が求められる。
トヨタ自動車のサプライヤーであるデンソーは、2025年までに電動化関連部品の売上高比率を50%に引き上げる目標を掲げる。しかし、中小のサプライヤーにとっては、巨額の設備投資や技術者確保が難しく、淘汰が進む可能性が高い。
サプライヤー間の格差拡大
調達構造の変化は、サプライヤー間の格差を拡大させている。電動化対応が進む大手サプライヤーは、EV向け部品の受注を伸ばしているが、対応が遅れる中小企業は受注減少に苦しむ。ある部品メーカーの幹部は「エンジン部品の受注が前年比で20%減少した。電動化部品の開発に切り替えなければ、生き残れない」と危機感を語る。
経済産業省の調査によると、自動車部品サプライヤーの約7割が従業員300人未満の中小企業であり、技術転換のための資金や人材が不足している。政府は補助金制度を設けているが、申請手続きの煩雑さや採択までの時間が課題となっている。
海外メーカーとの競争激化
EVシフトは、海外の部品メーカーとの競争も激化させている。中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションなど、バッテリー分野で先行する海外メーカーが日本市場への浸透を強めている。日本のサプライヤーは、品質や納期で優位性を持つが、価格競争では劣勢に立たされることが多い。
ある自動車メーカーの調達担当者は「バッテリーは海外メーカーの方がコスト競争力が高い。国産サプライヤーには、差別化できる技術の開発が求められる」と指摘する。
生き残りをかけた戦略
こうした状況の中、サプライヤー各社は生き残りをかけた戦略を模索している。一つの方向性は、電動化対応部品への特化だ。例えば、従来エンジン部品を手がけていたメーカーが、モーター用の磁石やバッテリーケースなどに生産を転換するケースが増えている。
また、異業種との連携も進む。ある精密機器メーカーは、自動車部品メーカーと協業し、EV向けの冷却システムを開発した。このようなオープンイノベーションが、技術開発のスピードを加速させる可能性がある。
さらに、M&Aによる事業再編も活発化している。大手サプライヤーによる中小企業の買収や、同業種同士の統合が進み、業界全体の再編が加速している。
政策支援の必要性
サプライヤーの転換を後押しするため、政府の政策支援も重要だ。経済産業省は2023年度補正予算で、中小サプライヤーの電動化対応を支援するための補助金を拡充した。しかし、現場からは「補助金の申請が複雑で、実際に活用できるまで時間がかかる」との声が上がる。
また、自動車メーカーとのリスク分担も課題だ。サプライヤーが電動化部品の開発投資を行う際、自動車メーカーが長期契約や価格保証を行うことで、リスクを軽減する仕組みが求められる。
EVシフトは、自動車産業のサプライチェーン全体を大きく変える。部品調達の激変は、サプライヤーにとって死活問題であり、生き残りをかけた対応が急務となっている。



