メルカリが暗号資産(仮想通貨)事業で攻勢に転じる。ビットコインが過去最高値から半値に下落する「冬」の局面にあって、同社はコインチェックとの提携を発表。取扱銘柄を従来の3銘柄から15銘柄へと5倍に拡大し、休眠状態にある200万口座の活性化を狙う。
法改正で暗号資産が金融商品に
今年4月、金融商品取引法の改正案が閣議決定された。一部の暗号資産を初めて金融商品として位置づけ、インサイダー取引の禁止や発行者への情報開示義務を課す内容だ。国会で成立すれば、2027年度の施行が見込まれる。メルコインの中村奎太CEOはこれを「税制を含めて極めて前向きな変化」と評価する。
税制面でも先行した動きがある。2026年度税制改正で、一定の暗号資産の売却益を最高55%の総合課税から株式並みの20%の申告分離課税に改めることが決定。改正金商法の施行を待って適用が始まる。
両社の見立て:市場拡大を見据えた先回り
変わるのは規制の枠だけではない。中村氏は「証券会社などの伝統的な金融機関も参入しやすくなる」とし、暗号資産が「NISAのような一般的な投資商品と並んで比較・検討されるようになる」と期待を語る。
コインチェックの井坂友之社長も、コンプライアンスの観点から参入をためらってきた企業や機関投資家が「安心して参入できる環境が整う」とみる。両社が見込むのは、暗号資産が投機色の強い商品から、一般的な投資商品の比較対象へと変わる局面だ。
相場の冬の間に、広告費や基盤投資を抑えながら、入り口(メルコインの400万口座)と基盤(コインチェックの交換業インフラ)を組み上げておく。制度が整い客層が広がったとき、すでにインフラは完成している。制度変更後の市場拡大を見込んだ、先回りの提携といえる。
初心者400万口座を「奥」へ連れて行くリスク
ただし、この座組みで身軽になったのは事業者側だ。審査や基盤のコストは2社で分担できても、価格変動のリスクを引き受けるのは利用者である。
85%が未経験から始めたメルコイン利用者の目の前に、半値への下落を挟んで、ミーム系を含む12銘柄が新たに並ぶ。下落局面で利用者の損益や売買行動がどうだったか、開示された数字はまだない。
コストの見え方にも論点が残る。販売所形式の売買では、買値と売値の差であるスプレッドが実質的な手数料になる。中村氏によれば、新規の12銘柄はコインチェックのスプレッドを使い、提携に伴う上乗せは「乗せていない」。水準そのものは「市況にもよる」として、会見では明らかにしなかった。



