リニア中央新幹線の建設着工に向けた「最後の1ピース」、8.9キロの静岡工区の着工を、鈴木康友・静岡県知事が7日に容認した。環境問題を端に発した9年近くにわたる膠着状態から動き出した瞬間だった。
総工費11兆円の国家プロジェクト
総工事費11兆円。JR東海が主体となり、国の財政投融資が3兆円入るなど、国家的プロジェクトとなっているリニア中央新幹線。1962年に国鉄がリニアの研究を始めてから60年以上がたつ。
計画では、東京・品川駅を起点に、神奈川、静岡、山梨、長野、岐阜の各県を通り、名古屋駅までを最速40分でつなぐ。途中駅は全部で四つ。神奈川県駅は相模原市、山梨は甲府市・中央市、長野は飯田市、岐阜は中津川市につくられる。
リニア経済圏の構築
朝日新聞が、開通前後の到達所要時間を独自に調べたところ、名古屋、大阪だけでなく、新駅ができる山梨、長野、岐阜周辺も、JR品川駅からの所要時間が1時間圏内に入り、巨大な「リニア経済圏」が構築される。
完成した未来を踏まえた沿線地域の動きは少しずつだが進んでいる。新宿からJR特急あずさに乗り、約90分で到着する甲府駅。さらに車で約25分進んだ甲府市大津町には、広大な山梨県駅の予定地が広がる。今年3月に駅は着工し、2031年の完成をめざし、遺跡調査などが始まっている。
住民の期待と課題
リニアが開通すれば、この駅から東京・品川まで約25分。東京や名古屋への通勤・通学も可能なアクセスで結ばれる未来に、住民の期待もふくらむ。山梨県駅の予定地の近くに住む女性(53)は「子どもが家から東京なり名古屋なりに通って働くという将来もイメージしている」と語る。首都圏から移り住む若い世代が増えて活気が出ることや、甲府駅のある中心部から離れている立地の周辺の発展にも期待しているという。
一方、静岡工区は南アルプスという最大の難所が待ち構えている。これまでの議論の舞台裏や工事の今後を描く連載が始まる。
山梨経済同友会の期待
「空港もない、新幹線もない。ないないづくしの山梨にリニアが来る。千載一遇のチャンスだ」と山梨経済同友会の入倉要代表は語る。リニア開通により、山梨県は東京・名古屋へのアクセスが劇的に改善され、経済活性化が期待される。



