長期間入居希望がなく、空き室が目立っていた築30年の団地が、「移住者の聖地」として生まれ変わった。長野県佐久市臼田地区にある「ホシノマチ団地」は、かつて空き室が目立つ市営住宅だったが、移住者向け賃貸住宅として再生。入居者の退去後も約9割が市内に定住するなど、高い定着率を誇る。
入居ゼロの団地が「移住者の聖地」に
ホシノマチ団地は、築30年の市営住宅を改修し、移住者向けの賃貸住宅として運営されている。当初は入居希望が5年以上もゼロだったが、リノベーションと移住促進施策により、現在は人気物件となっている。団地の管理・運営は、株式会社みんなのまちづくりが担う。
平均入居期間1〜2年、退去後も9割が市内定住
ホシノマチ団地の入居期間は平均して1〜2年。退去後も市内に住み続ける人の割合は89.4%にのぼる。戸建てに移る人もいれば、別の賃貸物件に引っ越す人もいる。一方で、「気づいたら3年経っていた。今後も住み続けるかも」と、気に入って長く住む入居者もいる。
同団地の運営会社は、「2年ごとの契約更新だが、早く退去することもできるし、更新料もない。佐久で暮らすハードルを下げたいという考えが反映されている」と説明する。
「団地」という形態が生むメリット
移住では、地域との関わり方を自分で探さなければならない場面も多い。しかしホシノマチ団地なら、移住者が自分のペースで地域を知り、人や情報につながれる。団地という形態だからこそ実現できることがたくさんある、と運営会社は強調する。
移住は、住む場所を決めた瞬間に完了するものではない。交通の感覚や仕事の仕方、子どもの環境、地域との距離感を確かめる時間も必要だ。ホシノマチ団地では、その時間を日々の暮らしの中で持つことができる。
国交省の賞も受賞、他の自治体にも波及
2025年、ホシノマチ団地は国土交通省の「地域価値を共創する不動産業アワード」で優秀賞、「まちづくりアワード」で特別賞を受賞した。空室が続いていた市営住宅は、移住者を受け入れる住まいとなり、地域との接点をつくる中継地点になった。
現在、ホシノマチ団地のモデルを生かし、他の自治体でも空き住戸の活用提案が行われている。星のまちと呼ばれる臼田の小さな団地は、移住者が佐久で暮らし始めるための助走の場となっている。



