11月にトルコで開催される国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)に向け、最終エネルギー消費に占める電力の割合(電化率)を引き上げる目標が新たな焦点となっている。有志国グループ「Electrify Now」が6月23日に結成され、2035年までに電化率を現在の20%強から35%に高める目標を提案。賛同を呼びかけている。
Electrify Nowの結成と目標
共同声明によると、同グループには議長国トルコ、オーストラリア、前回議長国ブラジルのほか、欧州委員会、英国、カナダ、韓国、フィリピンなどが参加。クリーンエネルギーを活用した家庭、産業、輸送の電化加速を掲げ、6月9日に議長国が示した電化率目標への支持を求めている。
COP31の交渉議長を務めるオーストラリアのクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は共同声明で、「世界的なエネルギー危機は、強固な送電網と蓄電施設に支えられた電化の重要な役割を明確に示した。電化はエネルギー料金の削減、排出量削減、エネルギー安全保障の強化を実現する現実的な方法になる」とコメントした。
IREANA報告書が根拠
提案された目標の根拠は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が5月に公表した報告書。IRENAは2011年設立の国際機関で、日本を含む約170か国とEUが加盟する。報告書は、世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるには、電化率を2035年までに35%、2050年までに50%以上に引き上げる必要があると分析。ガソリン車から電気自動車(EV)への転換や、化石燃料冷暖房からエアコンへの転換などを想定している。
電化と再エネ拡大は両輪
ただし、電化率向上だけでは不十分だ。IRENAのフランチェスコ・ラ・カメラ事務局長は報告書公表時に、「電化と化石燃料の段階的廃止は切り離せないもので、共に進めていかなければならない」と強調。現在、発電全体の約30%に過ぎない再生可能エネルギーの割合を、2035年に約80%、2050年に90%超に引き上げる必要性を指摘している。
世界の電力消費量は、新興国の経済成長、エアコンやEVの需要拡大、AI技術の急速な進展を背景に増加し続けている。
日本の現状と商機
日本は製造業を中心に工場やオフィスの電化が進み、エアコンなどの家電普及率も高い。電化率は既に約30%に達し、主要国で最高水準だ。電化の進展は日本企業の商機にもつながる。空調分野で世界トップクラスのダイキン工業をはじめ、パナソニック、三菱電機など有力企業が多く、高度な省エネ技術を持つ日本メーカーのグローバル展開は、世界の気候変動対策の推進力となり得る。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエアコン年間販売台数は1990年以降3倍に増え、約1億3000万台に達している。インドやインドネシアなどの暑い地域の新興国や、普及率が低い欧州での販売拡大が見込まれ、気候変動による異常高温の頻発も需要を支える。
課題:脱炭素電源とEV転換
一方、日本の非化石電源(再生エネと原子力)の比率はようやく30%に達したばかりで、主要国で最低水準。「電化と化石燃料の段階的廃止は切り離せない」という警句を日本政府は重く受け止める必要がある。
また、日本の自動車メーカーはEV転換に慎重だが、戦略見直しを迫られる可能性がある。中東情勢悪化による原油高でEVの燃費優位性が相対的に高まり、一時減速したEVシフトが再加速。IEAは5月の報告書で、2026年のEV新車販売台数を前年比1割増の2340万台と予測する。
中国は世界のEV・再生エネ産業を先導しながら電化率を急速に高めている。先行する日本は、高い電化率を支える高度な技術力を活かし、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を見据えた経済活性化を模索する必要がある。



