宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11日午前4時23分31秒、日本の主力大型ロケット「H3」9号機を鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げる。昨年12月の8号機失敗以来、約8カ月ぶりに、主エンジン2基と補助エンジン2基を使う標準型の「22形態」が飛ぶことになる。
台座の新方式で信頼回復を目指す
失敗の直接原因となった衛星を載せる台座には、従来の接着方式をやめ、ボルトとナットで固定する新方式を初めて採用。信頼回復へ向け、H3が本来の運用に戻れるかを占う重要な打ち上げとなる。
9号機は、準天頂衛星「みちびき7号機」を搭載する。10日午後には、格納されていたロケット組立棟から約30分かけて、約500メートル離れた発射地点へ機体を移動。打ち上げに向けた最終準備に入った。
8号機の失敗原因と対策
H3は昨年12月、8号機の打ち上げに失敗。衛星を載せる円錐状の台座が飛行中に損傷し、破壊に至ったことが原因だった。4枚に分けて製造したパネルを接着して組み立てる際に不具合が生じ、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の表面材と、内部のアルミ材との間に剝離が起きていた。
その後、今年6月に打ち上げた6号機では、従来の接着方式で既に組み立てを終えていた台座を大がかりに補修して使用した。接着部分の表面材などを取り除いて樹脂で埋め、その上から補強材を接着するなどしたもので、打ち上げは成功した。
これに対し9号機では、いわば応急措置だった補修から一歩進む。台座を構成する4枚のパネルを接着せず、ボルトとナットを使う方式で組み立てた。先代のH2Aロケットで実績のある方式で、接着工程そのものをなくすことで、8号機で起きた剝離の発生を根本的に防ぐ狙いだ。H3でこの方式を実際の打ち上げに使うのは、今回が初めてとなる。
試験で実証、自信を持って打ち上げへ
9号機用の台座は、6号機のように組み立て済みのものを補修したわけではない。8号機の失敗前にパネルの状態まで製造を終えていた2機分のうち1機分を使い、ボルト留め方式で新たに組み立てた。もう1機分は同じ方式で台座に組み立てて試験に使われ、未結合のパネルは残っていない。このため、次の10号機用はパネルから新たに製造し、同方式で組み立てる。
試験用の台座では、飛行中に受ける力や真空環境、衛星を覆うフェアリングを分離する際の衝撃などを同時に再現する試験を実施。実際の飛行時を上回る1.5倍の荷重にも耐えることを確認した。
H3プロジェクトチームの有田誠プロジェクトマネージャは「自信を持って打ち上げに臨める」と話す。
22形態の再開、平常モードへの復帰
9号機にはもう一つ、大きな意味がある。H3の標準型「22形態」の打ち上げが、8号機以来初めて再開することだ。6月に成功した6号機は、補助エンジンを使わず主エンジン3基で飛ぶ「30形態」の初飛行だった。9号機では主エンジン2基と補助エンジン2基を使う22形態に戻る。
今後もこの形態による多数の衛星打ち上げが予定されており、成功すればH3はいわば「平常モード」に復帰し、信頼を取り戻しながら打ち上げ実績を積み重ねる道を再び歩み始める。
有田氏も22形態について「これをぜひとも成功させ、再びH3のラインアップに戻していくことには非常に意味がある」と強調する。8号機の失敗では搭載していた準天頂衛星「みちびき5号機」を失い、政府が進める日本版GPS(衛星利用測位システム)の構築に悪影響を及ぼしているだけに、「今回また信頼を寄せていただき、打ち上げに再トライさせていただく。その期待に何とか応えたい」と決意を語った。



